大阪府

神立(こうだち)(八尾市)

八尾市街地の東側、信貴・生駒山脈の山麓に神立(こうだち)という集落がある。十三(じゅうさん)峠越えで大阪と奈良を結ぶ古い街道(俊徳街道・十三街道)に沿った集落で、石垣が連なる急坂が魅力的である。「大阪まちなみ百景」にも選ばれている。古くから豊かな山の水を生かし菊など花卉類の栽培が盛んだという。

秋の神立(八尾市)2015.11.16     36×51cm
せっかくの紅葉のシーズンなのに、野暮用に加え天候不順の日が続いてなかなかスケッチに出かけられない。この日は久しぶりの好天となり、午後から時間ができた。どこかへ行きたいと思ったが、適当な場所が思い浮かばない。少し迷った結果、八尾市神立を選んだ。15年夏に八尾西武で開かれた「河内を描く美術展」にまったく同じ場所から描いた絵(↓)を出展したが、その絵は2月に描いたものなので、秋景色なら感じが違うはずと思った。残念ながら家並みがいかにも面白いこのポイントは、紅葉の季節よりもむしろ家々がよく見える冬枯れの時の方が魅力的なことが分かった。

秋の神立・その2(大阪府八尾市)2015.11.16     F6
一番高い所にある玉祖(たまおや)神社から集落内の狭い坂道を下ってくると、どっしりとした母屋と白壁の土蔵、ちょっと痛んだ土塀などスケッチ心をくすぐる道具立てのそろったお宅があった。さらにたくさん実をつけた柿の古木が印象的なので、2枚目に選んだ。

秋の神立・その3(八尾市)2015.11.16     F6
秋の日は短く、2枚描いたらもう太陽が西に傾いている。神立には黒いトタン板でカバーされた大和棟造の民家が何棟かあり、それらが逆光の西日を受けてそびえる風景が面白いと思った。背景には大阪市南部の町並みが広がっていて、右端の瓦屋根の向こうに見えるのは日本一ののっぽビル「あべのハルカス」だろう。さらにその向こうには、大阪湾を隔てた淡路島の島影らしきものがうっすらと見えた。

夏の神立・その1(八尾市)    2015.08.28     F6
八尾市の西武八尾店で「河内を描く美術展」が開幕、初日のこの日、午後の部の会場当番だった。会場が百貨店のため午後の当番は3時から8時までと後ろ倒しなので、”出勤前”にスケッチすることにした。今回の出展作に下の「早春の神立」を選んだこともあり、この日も神立へ行った。集落の一番高い所にある玉祖神社の駐車場に車を止めさせてもらったが、境内で「長鳴鶏」と呼ばれる国の天然記念物・黒柏鶏が飼育されており、到着したのが朝の10時のため、鶏小屋から「コケコッコ〜〜〜」と長い鳴き声が聞こえた。何だかとても得した気分。さてスケッチの方はとにかく日陰優先。山の斜面にある神立の集落内は坂道ばかりで、神立会館の前の道が唯一水平。入母屋造の屋根がずらりと並ぶ風景が気に入り、この場所を選んだ。

夏の神立・十三峠への道(八尾市)    2015.08.28     F6 
上の絵の神立会館前の道を北へ進むと急坂の道に突き当たり、その三叉路に面して「神立地蔵堂」があった。急坂は昔の「十三街道」らしい。現在は八尾から信貴・生駒山脈の十三峠を越えて奈良県の平群へ至る自動車道が整備されているが、神立の集落内を通る旧道は山の中腹にある「水呑地蔵尊」を経由して十三峠へ続いており、平安時代からの歴史がある古い街道だという。歌人の在原業平がこの村の娘に会うため、大和からこの街道を通り、800回も通ったという伝説もある。急坂の様子が面白いので、小さな日陰に入ってスケッチした。

夏の神立・その3(八尾市)    2015.08.28     F6
昼食後また、スケッチポイント探し。神立の集落内は坂だらけだが、そんな中でいかにも急坂なのがこの場所で、ちょうど影の具合が夏らしいので3枚目にはこの場所を選んだ。坂を登り切ったところに神立会館があり、最初に描いたのがその場所だった。

早春の神立(八尾市)    2015.02.21      36×51p
この日の午後「河内を描く美術の会」の総会が八尾市で開かれるので、早めに出かけて八尾市神立でスケッチすることにした。集落へ上る道がとても急で幅も狭かったが、地図で確かめると集落の最上部へ直接アプローチできる2車線の迂回道路ができていることが分かった。路傍に「芝塚古墳址」の標識(→)が建っており、そこは道幅が広くて駐車できるうえ、神立の家並みが一望できた。標識横に椅子を置きスケッチを始めた。目の前のフェンスが邪魔になったが、集中して描いているうちに目に入らなくなった。絵の左側に広がる市街地は東大阪市の中心部だと思う。

                             ●この絵を第10回「河内を描く美術展」(2015年8月)に出展した。






神立の家並み(大阪府八尾市)    2015.02.21      F6
上の絵を描いた後、集落の中へ入っていった。大和棟のお宅があちらこちらにあり、それぞれ魅力的なのだが、なかなかスケッチポイントが絞りにくい。斜面に立地しているだけに道が狭くて急だが、そんな中に10台ほどの車が止められる空き地があり、何軒かが共同駐車場として利用しているらしい場所があった。入り込んで振り返ると、そこから見える屋根の組み合わせが面白い。椅子を置いた場所は日影だったが、日陰が快適に感じるほどの天候だった。

神立(八尾市)07.08.07         31×41cm
この絵にある狭い道を車で登っていくと、だんだん坂が急になりしかも駐車スペースがない。仕方なく「駐車禁止」の掲示がある神立会館に駐車させてもらったが、あとで集落の一番上にある玉祖(たまおや)神社付近に車が止められることが分かった。しかし、そこへの運転はたぶん肝を冷やすに違いない。

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