香川県

多度津(多度津町)

多度津港は金毘羅さんの玄関口として発展した。港の近くには参詣客の宿が立ち並んでいたという。また古くは北前船の寄港地で物資の集散地としても栄えた。多度津駅は予讃線と土讃線の分岐駅であり、要するに交通の要衝だった。町全体は古い町並みが残る落ち着いた雰囲気だが、山の上にある少林寺拳法本部の派手な建物が目を引き、海岸部には造船所やクレーンメーカーの新鋭工場が並び工業都市の一面もある。

多度津の俯瞰(多度津町)08.04.26 36×51cm    Tさん蔵
多度津の町を一望できる桃陵公園というのがあって、そこへ登ると「讃岐富士」まで見渡せる。とんでもない家数だが「四国へ来た記念に」と家々を丹念に描く気になった。ふと気がつくと背後に10人近いギャラリーが集まっていて「正面の小山の上に見えるのが丸亀城」などと解説してくれる。そんななかに今年86歳という老婦人がおられ、絵にも造詣が深く話が弾んだ。公園には「一太郎やあい」という巨大な立像がある。日露戦争に出征する息子を多度津港まで見送りに来た老母が思わず船に向かって叫んだ、という話をもとに建てられた像だそうだが、何となしに、この老婦人とイメージが重なった。


(左)「一太郎やあい」の像。昭和8年に銅像が建てられたが、昭和17年に金属供出令で撤去、翌18年コンクリート造りで再建されたという。

東浜(多度津町)08.04.26  F6 
JR多度津駅からスケッチポイントをチェックしながら多度津港まで行った。とりあえず港近くの東浜で古い旅館の建物を描くことにした。軒を借りた店のご主人がやってきて「古い町並みのスケッチですか。この道は車が多くて危ないからもっと中へ」と店先に招き入れてくれた。こういう扱いを受けると嬉しいものである。私とほぼ同じ年恰好のご主人も町並み保存に興味があるそうで、昔の町の様子などを丁寧に解説してくれた。

西浜@(多度津町)08.04.26  36×51cm
1枚目のスケッチをしていると、近くに遊郭の雰囲気を残す町並みがあると教えてくれる人がいた。わざわざ四国まで来て遊郭でもあるまいと思うし、所用で高松へ来たついでのスケッチなので背広姿なのも気が引ける。でも、行ってみるとなかなか魅力的な雰囲気である。今は使われていない家も多く、侘しさがただよう。せめて明るい環境で描こうと、町並みを抜けた所にある広い駐車場で、太陽にさらされながら描いた。













西浜A(多度津町)08.04.26  F6


西浜の2枚目は同じ路地を反対側から。営業している雰囲気の店はなく、かつての繁栄ぶりをうかがうことはできない。名前を知らない真っ赤な花が見事に咲いているのが印象的だった。

本通(多度津町)08.04.26  F6
4枚目に手間のかかる多度津の俯瞰を描いたので、もう十分という気分だったが、時計を見るとまだまだ時間は早い。考えてみると、多度津で一番古い町並みが残っている「本通」の絵がないのでもう1枚欲張ることにした。桃陵公園を下りたところで通りかかった路地がけっこう感じがいいので、ここで1枚。本通にはまだまだ描きたいポイントがあったが、日も傾いてきたのでこれにて多度津スケッチはおしまい。

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