奈良県

桜井あちらこちら(桜井市)

奈良県桜井市は日本最古の市場「海柘榴市」(つばいち)が開かれるなど歴史の町で、周辺には歴史遺産も多い。また、旧初瀬街道(伊勢街道)や古代からの上街道(上ツ道)が通っていたため、古い町並みも残っている。一方で吉野杉の産地をバックにした木材集散地としても知られている。内陸部では日本一の製材の町でもある。

本町通6丁目@(桜井市)2013.01.31        F6
桜井市中心部で腰を据えてスケッチしたことがなかった。この日、町の西の入り口にあるヤマダ電機に車を止めさせてもらい、東西を貫く旧初瀬街道をとりあえず東の外れまで歩いてみた。ところどころに旧街道らしい古い町屋が残っているが、アーケードのある商店街になっている部分もあり、家が取り壊されて駐車場になっている場所も目立つ。空き地ができたことにより、本来、道路に面した表の顔しか見えなかった建物が横からも見えるようになることがある。古い町でよく見かける風景で、東の町外れ近くの駐車場に入り込みそんな風景を1枚。

本町通6丁目A・未着色(桜井市)2013.01.31        F6
旧初瀬街道に沿って古い家並みが続いていたが、少し横道に入ったところで、屋根の上に煙出しがずらりと並んだ珍しい形の長屋を見つけた。京都でよく見かける「ろうじ」まであった。煙出しは農家建築などでよく見かけるが、町中の長屋にあるのは珍しく、しかも1軒に1基ずつついているのを初めて目にした。この絵は鉛筆スケッチ段階のもの。

本町通6丁目A(桜井市)2013.01.31        F6
上の鉛筆スケッチに色を着けた。しばしば、着色前の方が迫力がある場合があるが、今回もどうやら同様の思いがしている。しかし、一度、色を着けるともう元へは戻らない。左手のお宅は多分タバコや食料品などを扱っていた店であろう。右手は散髪屋さんだったかなと思うがよく分からない。いずれにせよ今は人が住んでおられないようだった。スケッチ後、正面の路地の奥へ足を踏み入れてみた。空き家になってかなり時間が経っているようで、湿ったにおいがした。

本町通6丁目A(おまけ)
この構図は屋根の面白さもあるが、やはり下の方の中央に口をあけた路地がポイントであろう。右のスケッチは、屋根の棟の線から描き始めたが、その位置が低すぎたため、描き進めるうちに肝心の家の下の方が紙からはみ出し、見事に失敗してしまった。最初の一手はいかにも大切。
仕方なく、その反省を込めて描き直したのが上の絵である。

本町通5丁目(桜井市)2013.01.31        F6
旧初瀬街道を東から西へ本町通6丁目から5丁目に移るあたりに、南北に交差する細い路地があった。北向きへは空き家の建物が崩れそうで「通行止め」の表示があったため、南向きに入ってみた。路地を抜けたところで振り返ると2階建てと平屋の長屋が向かい合い、面白い構図である。左側の平屋の屋根に三角の煙出しが付いており興味深い。

桜井・本町通4丁目(桜井市)2013.01.31        F6
この日はもともと桜井の旧初瀬街道沿いに残る古い町並みを描くつもりだった。旧初瀬街道沿いの本町通1丁目から3丁目までは、アーケードを設置した商店街になっており、古い町屋はあるものの絵にしにくい。アーケードが切れた4丁目にとても重厚な建物の薬局があったので、これを右代表として描くことにした。通りがかったかわいい二人連れ幼稚園児が絵を褒めてくれたので、お礼に後姿を描き込んでおいた。

桜井・仁王堂東町(奈良県桜井市)2013.01.31        36×51cm
旧初瀬街道の桜井駅より東の部分は商店街として発展した分、古い町並みはあまり残っていなかった。半面、駅より西の仁王堂地区では、街道沿いに連続した古い町並みが残っていたので、この日初めて大判の紙を使い、街道筋の家並みを描いた。一番手前のほとんど雨戸の閉まったお宅の玄関のガラス戸に「着物直し物、御仕立いたします」との張り紙が。何となくこの家のご主人の生活ぶりが想像できる。

山田寺跡あたり(桜井市山田)10.10.22       F6
明日香村八釣の遠景を描いた後、同じ場所で後ろを振り返ると黄金色の棚田に囲まれた感じのよい家並みが見えた。とりあえずスケッチし帰宅後調べてみると、集落は桜井市山田で、上下の田んぼに挟まれた平らな場所は「山田寺跡」であることが分かった。遠くに見える山は三輪山のようである。山田寺は7世紀に創建された古代寺院で、明治初期の廃仏毀釈で廃寺となったが、その跡地は国の特別史跡に指定されている。

阿倍木材団地(桜井市)04・02・28 36×51cm
桜井の町は明日香や大宇陀などを訪問するときによく通る。この日も明日香にでも行こうかとこの製材所の前を通りかかり「いっそのこと」と車を止めて描いた。土曜日なので製材所は休みだったが、平日にこんなところで絵を描いていたらつまみ出されてしまう。(この製材所はその後いろいろ姿を変え、09年現在はコンビニエンスストアの変身している)

吉隠(桜井市)04・07・18 F6
桜井市から榛原町に向かう国道165号線を走っていて、国道脇にいかにも旧街道らしい風景を見つけて車を止めた。おそらく旧伊勢街道だろう。バス停の表示を見ると「吉隠」とある。帰宅して調べたら「よなばり」という難しい読み方だった。(偶然通りかかった吉隠だったが、ネット仲間のsatopyさんが「吉隠は万葉集にも登場する由緒ある地」であることを教えてくれた。この地を詠んだ歌は5首もあるという。それにしては絵がお粗末)

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