奈良県

粟原(桜井市)

粟原と書いて「おおばら」と読む。桜井から大宇陀へ抜ける国道166号線は女寄(みより)峠というかなり険しい峠を越えるが、その手前の上り坂の途中で右側に粟原の集落が見えてくる。昔、粟原寺という大変由緒のある寺があった集落で、山肌にへばりつくように家々が点在している。スケッチポイントがたくさんある魅力的なところだった。
























粟原寺跡への道(桜井市粟原)    2015.09.10     F6
中女寄で描いたあと、少し道を引き返して粟原へ。スケッチポイントを探しながら集落の一番上まで上ると、どこかで見たことのある風景に出会った。『はてな?』と思いながら、素晴らしい構図に嬉しくなりスケッチを始めた。集落よりさらに高い所にある国指定史跡・粟原寺跡への坂道である。『どこかで見た風景』と思ったのを帰宅後確かめると、「奈良の街道筋・下」(1991年、草思社刊)に掲載されている沢田重隆氏の作品であった。この本を入手したのはずいぶん昔だが、かつて繰り返し眺めた絵が記憶の底に残っていたらしく、出来上がった絵は沢田氏の作品の「パクリ」と言われかねないほどそっくりの構図になっていた。右が「奈良の街道筋・下」に掲載されている沢田氏の作品である。

粟原の坂道(奈良県桜井市粟原)    2015.09.10     F6
上の絵を描いている時に雨になった。車に避難し止むのを待ったが、なかなか雨脚が衰えない。ラジオで茨城県で鬼怒川が氾濫したと伝えており、状況はだんだん深刻になっている。午後2時になったのを機にあきらめて帰りかけたが、車を走らせてしばらくするとどうやら雨は止んだようである。何しろ遠くまで来ているのでもったいないと思い、Uターンした。物好きなことである。再び坂を上って、先ほど目をつけていたポイントで描き始めたが、水分を含んだ画用紙は鉛筆の載りが悪い。時々傘を広げながら何とか仕上げたが、勢いのない絵になってしまった。

粟原C(桜井市)07.03.01 36×51cm
国道166号線道から眺める粟原の家並みが美しく、一度描きたいと思っていた。春のような日、道端の草地に車を止め、ウグイスの声を聞きながらのんびり描いた。陽だまりなのでついにセーターも脱いだ。村なかに1本だけ満開の桃の木があるのを見つけて、普段は使わない桃色絵の具で「トメ」にした。2015年9月にも同じアングルで描きたいと思って出かけた。しかし、国道脇の草地が藪になり、集落が見えなくなっていた。

粟原B(桜井市)06.05.04 36×51cm
粟原にまだ描き残したポイントがあったような気分。この日はひまつぶしさんが粟原に行かれるらしいので、再び出かけた。車で到着した時に、氏がバスから降りてこられた。立体的な地形なのでスケッチポイントには事欠かない。

粟原@(桜井市)06.04.17 36×51cm
息を切らしながら棚田の中の坂道を登っていくと、目の前に風格のある民家がどっしりと構えていた。スケッチする間、ずっとウグイスの声が絶えなかった。

粟原A(桜井市)06.04.17 36×51cm
粟原で1枚描いた後、少し桜井よりの忍阪(おつさか)で描くつもりで移動した。しかし、適当なポイントが見つからないので、再び粟原へ引き返し、粟原バス停のところから国道下の旧街道沿いの家並みを描いた。屋根の重なりだけでなく、芽吹き始めた春の木々がとても魅力的だった。とくに山並みの重なりが気に入ったが、原画はともかく再現画像では薄く仕上げた遠くの山は文字通り霞んでしまっている。

桜井市粟原・中女寄へ
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