三重県

諏訪(三重県伊賀市)

車窓から一瞬見えた風景に「一目ぼれ」することがある。伊賀上野から伊賀焼の産地・丸柱を訪ねるとき、途中で通りかかった「諏訪」という集落の広々とした景色がとても印象に残った。山裾に家々が並び、その手前に豊かな田んぼが広がる景色は日本の農村の原風景ともいえ、日を置かず再び訪問した。

諏訪@(伊賀市)09.05.14  36×51cm 
この日はどこかでスケッチしようと奈良方面を目指したが、候補地を考えているうちに、結局、大阪府→奈良県→京都府→三重県と府県境を3度も越え、わざわざ三重県まで田んぼを描きに出かけることになった。物好きなことである。少し高台になった場所から、その一目ぼれの風景を描いた。左端から家を1軒1軒、その表情を見ながら描いていくのは楽しい。高原にある村ではすでに田植えも終わっていた。

諏訪A(伊賀市)09.05.14  F6
「諏訪」の村なかを一周してみて、この家並みが気に入った。しかし、日影がない。見回すと国道の旧道に架かる橋のたもとに「払子(ふっこ)川」という川の名前を書いた標識があった。標識がつくる日影は小さな小さなものだが、ないよりはまし。ところがその影は、時間とともに動く。2、3度椅子を移動しながら仕上げた。

諏訪B(伊賀市)09.05.14  36×51cm 
「諏訪」での1枚目は桜の木の下で、2枚目は標識が作る小さな日影で描いた。しかし3枚目となるともう日影にこだわっておられない。最初からちょっと気になっていた逆光の風景を、真正面から太陽を浴びながら描いた。「午後3時を過ぎると日差しもそれほど強くない」とわが身に言い聞かせた。しかし、やっぱり暑かった。

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