京都府

上狛(木津川市山城町)

今は木津川市の一部となった山城町の上狛は中世以来の「環濠集落」として有名である。環濠集落は奈良(大和)平野に数多く見られるが、ここは地理的には近いとはいえ京都府下である。上狛の環濠集落は最初は渡来系の武士・狛氏の居城(平城)だったらしい。今でも集落を半周する形で濠が残っている。また上狛には国道24号線と木津川の間の地域にお茶問屋が軒を連ね、独特の町並みを形成している。

   
  「福寿園」本店(木津川市上狛)21.09.20   F6  
  10年以上足を運んでいない木津川市の木津本町へスケッチに出かけたが、町を歩いてみると、古い町並みは取り壊され、以前描いた場所もすっかり様子が変わっていて、スケッチする気分にならない。仕方なく木津川を越えて上狛の茶問屋街へ移動、大手の「福寿園」本店の重厚な建物を描いた。  
 
 
小林家住宅あたり(木津川市山城町上狛)2014.05.25     36×51cm
せっかく周囲に田んぼが広がる上狛にやってきたのだから、広々とした農村風景も描きたいと思ったが、暑そうなので、午前中から日陰で描ける路地ばかりを選んでいた。午後3時ごろになり日差しも多少優しくなったので、後回しにしていた重文・小林家住宅を描きに行った。上狛駅から北へ歩いた線路沿いにある。江戸時代中期・1665年の建築で、大和棟造の巨大な茅葺屋根が遠くからでもよく目立つ。手前の田んぼに水が入っていたらもっといいのになあと思いながらスケッチした。

上狛・山城茶問屋街A(木津川市山城町)2014.05.25     F6
国道24号線沿いの食堂で昼食後、仲間と連れ立って、食堂の近くにある山城茶の問屋街へ行った。表通りから見える立派な土蔵群は以前描いているので、そのそばの狭い路地へ入った。生活感のある良い路地だったが、軽自動車でもぎりぎりという狭い道なのに、いろんな車が結構やってきて、そのたびに「ごめんなさいね」と言いながら道を譲った。

上狛・農業倉庫(木津川市山城町)2014.05.25     F6
国道24号線沿いの旧山城町役場近くに「京都やましろ農協」の倉庫がある。今は倉庫として使われていないようだが、この建物を地域おこしの拠点に活用しようという計画があるようだ。悠彩会スケッチ会のメーンイベントである昼食会まで少しだけ時間があるので、日陰を選んでこの倉庫を描いた。素早く仕上げるため、8Bの鉛筆を選んだ。細かく描くことができない分、スケッチ時間を短縮できるという狙い。何とか昼食時間に間に合った。

上狛環濠集落C(木津川市山城町)2014.05.25     F6
上狛駅から西へ行き国道24号線へ出る手前に環濠の名残の用水路がある。そこへ至るまでの間が環濠集落として発展した町並みだろうと思い、狭い路地へ入ってみた。いかにも環濠集落らしい立派な構えの家々が軒を連ねている。道幅が狭いので構図が取りにくいが、日影も確保できるため、1枚描くことにした。自宅に近い交野市の倉治や私部といった古い集落の路地で描いているような気分になった。

上狛駅前(木津川市山城町)2014.05.25     25×41p
2014年5月度の悠彩会スケッチ会が上狛で開かれた。上狛では、この町の特色である環濠の名残の用水路付近やお茶問屋が集まる辺りの風景は1日がかりで描いたことがあり、新しいスケッチポイントが見つかるかちょっと心配だった。JR上狛駅前に集合、幹事のNさんからスケッチポイントの説明を受けたが、その一つに目の前にある和洋折衷の建物が含まれていた。ちょうど日陰で描けるため、とりあえずの1枚目にこの建物を選んだ。K織物という会社の事務所として建てられたものだそうで、手前2階の窓に使われている湾曲したガラスが値打ちものだということだった。

上狛・山城茶問屋街@(木津川市山城町)10.04.28       36×51cm
上狛にお茶問屋が集中していることを不思議に思っていた。上狛交差点から木津川に向かう道路を歩いて行くと「山城茶業之碑」が建っていた。碑文を読んで、その疑問が解けた。江戸時代末に神戸港が開港され、山城各地からこの地に集められたお茶が木津川、淀川を経て神戸港に運ばれ、世界へ輸出された。お茶は生糸と並ぶ輸出品で、木津川の「上狛浜」を控えたこの地は茶の集散地として栄え「東神戸今神戸」とも呼ばれたのだという。その茶業之碑のそばで路地に並ぶ土蔵群を描いた。

上狛環濠集落B(木津川市山城町)10.04.28       F6
今度は環濠沿いを北西に歩いた。やがて集落の反対側はのどかな田園風景になった。環濠はどこまでも続いているようなので、適当なところで妥協して3枚目を描いた。スケッチしているうちに環濠というより、ますます普通の川を描いている気分になった。

上狛環濠集落A(木津川市山城町)10.04.28       F6
2枚目は濠沿いに南東方向へ歩き、振り返った景色を描いた。通りかかった人が「こんな何でもない風景が絵になるのですね」といわれる。「有名な環濠集落ですから」と応えたが、考えてみたら環濠ができたのは室町時代のことで、現在では確かに何の変哲もない川沿いの家並みにすぎない。家電製品回収のトラックがスケッチしている横をいやにゆっくり走ると思ったら、少し離れた場所にトラックを止めてわざわざ戻ってこられた。絵に興味がある人らしく、しばらく”油を売って”いった。

上狛環濠集落@(木津川市山城町)10.04.28       F6
上狛には以前から一度スケッチに行きたいと思っていたが、後回しになっていた。取りあえず、旧山城町役場のすぐそば、写真やスケッチでよく取り上げられているポイントで1枚描いた。

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