京都府

伊根の舟屋(伊根町平田、亀島、新井)

丹後半島の東端にある伊根湾には漁船のガレージともいえる「舟屋」を備えた家が湾に沿ってずらっと並んでいる。古くは「伊禰の浦」と呼ばれ、ブリ漁が盛んな豊かな漁村である。狭い道を挟んで山側に母屋、海側に舟屋があり、舟屋は舟の置き場としてだけではなく、作業スペースや若夫婦のための住居、隠居部屋などとして使われている。現在235棟が残り、最近、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。06年5月27日から28日にかけて「いらかぐみ」のオフ会が開かれた。

   
  伊根浦・亀島(伊根町)2018.02.09制作    54×74p(P20号)   
  寒波対策の第2弾。30何年ぶりとかいう福井豪雪で苦労されているテレビ画像を横目に描いた。実際の現地スケッチは下に掲載しているとおり、10年以上前の5月末。伊根湾の奥まったところにある亀島地区の高台に建つ慈眼寺からの眺めである。  
 
 
平田2(伊根町)06.05.27 36×51cm
オフ会での最初の1枚は役場のある平田地区の駐車場で描いた。雨予想が外れよい天気になったが風が強くて、絵の道具などが海に飛ばされないか冷や冷やしながらスケッチした。舟屋を眺めていて、台風のときにも大丈夫だろうかと不思議に思うが、奥まった湾のため高波は立たず、また年間の干満の差が5、60cmしかないという。しかも湾は南向きで背後に山が迫っているため冬の北風の影響もないそうだ。

亀島1(伊根町)06.05.27 36×51cm
午前中に1枚目を完成、昼食後に宿泊を予定している湾の奥の亀島地区へ移動した。山の上にあるお寺へ登ってみると、とても見晴らしがよい。ここも小さな入り江になっていて、まるで舟屋群が入り江に殺到するように建ち並んでいる。こうした場所の舟屋は山側の間口を広く、海側を狭くしたいわば扇型の構造になっているらしい。背後の山には椎の木が多く、この木が舟屋の土台や柱に使われているという。

亀島2(伊根町)06.05.27 36×51cm
2枚目を描き終えたのは午後3時。地元泊だからまだ十分に時間はある。ところが急に雨が降り出した。仕方なく予約してある民宿「おくの」へ行って相談してみることにした。「こちらへどうぞ」と案内されたのは舟屋の中。屋根があって雨がしのげるうえ、正面間近に舟屋が並んでいて、とても迫力がある。むしろ理想的なスケッチポイントといえる。最近は船が大型化し外に泊めているケースが多い。いらかぐみメンバーの到着を待ちながらゆっくりスケッチした。

亀島4(伊根町)06.07.06 36×51cm
梅雨入りでスケッチに行けないため、現地を思い出しながら描いた。上の絵と同じアングルだが、少しワイドに描いてみた。

亀島3(伊根町)06.05.28 36×51cm
舟屋の民宿に泊まった翌朝、夜中の雨もやんでいる。仲間は船をチャーターして湾内から舟屋の撮影に出かけたが、私はパスしてもう1枚描いた。田舎には珍しく伊根には空き家がないという。しかし舟屋の方は不要になったお宅もあって、手前の舟屋はそうした1軒。足元の岸壁は海面すれすれで、沖を船が通るたびに波が洗った。

新井(伊根町)06.05.28 F6
道の駅「舟屋の里」でいらかぐみメンバーと別れ、伊根湾から北に一山越えた「新井(にい)」へ行った。ここは「新井の千枚田」と呼ばれる棚田で有名なので、田んぼと家並みの組み合わせを描こうかと思ったが、結局、新井漁港で伊根湾のものとは一味違う舟屋を描くことにした。日曜日とあって漁港に人影はない。ちょっと寂しいような気持ちで描き始めたところへ、貸し切りバスで20人以上のスケッチグループが到着した。「ここのアングルがいい」「トイレはどこ?」などと急にそこここがにぎやかになった。京都老人大学絵画部の皆さんだという。追い立てられるような気分で、早描きして引き上げた。

この絵は03年5月のものです。
平田1(伊根町)03・05・05 36×51cm   
ふるさとからの帰りに寄り道して初めて伊根へ行った。船の上からしか舟屋の入り口は眺められないのかと思っていたが、観光案内所で聞くと、役場近くにちょうど良いポイントがあるという。なるほどおあつらえ向きに大きな駐車場があって、目の前が小さな入江になっているため、向かい側の舟屋がよく見える。釣り人の皆さんと椅子を並べてのんびり描いた。
この場所は平田地区の観光駐車場。入り口には500円と書いてあるのに番人はいない。しめしめと思っていたら、どこからか係の人がやってきてしっかり集金された。当番が決まっていて、遠くから見張っているらしい。

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