高知県

吉良川(室戸市)

室戸岬に近い室戸市吉良川に「土佐漆喰壁」に「水切り瓦」を巡らせた極めて特徴的な家々が並んでいる。この地方の厳しい気象条件から生まれたもので、他の町にも同様の建物が見られるが、吉良川ではとくにその数が多く、1997年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。明治から昭和初期にかけて良質の木炭の集積地として栄え、阪神間との“貿易”で財をなした家々が競ってこうした建物を建てたといわれる。

吉良川@(室戸市)09.09.08      36×51cm 
吉良川には長い間あこがれていた。しかし何しろ遠い。時間を有効に使いたいと大阪〜高知間のフェリーの時刻を調べたこともあったが、そのフェリー航路そのものが廃止になってしまった。このためスケッチを兼ねて安芸市で宿泊、翌朝、吉良川へ向かった。写真で確かめていた鳥居の見えるベストポイントはすぐに分かったが、身を隠す日影がまったくない。でも、せっかくここまで来たのだからと、太陽にさらされながらスケッチを始めた。

吉良川A(室戸市)09.09.08      36×51cm 
強い日差しの中で1枚描いたらすっかり疲れたので、飲み物を買い、坂の上に見える神社の森で一息入れた。引き返す時、ふと見ると、好都合な日影があって、坂の上から見下ろすアングルも面白い。手前に「水切り瓦」がアップになっていて、その仕組みもよく分かるし、目の良い方はお気づきかもしれないが、遠くに太平洋が見える。
この場所は町のお年寄りが一息入れる場所だという。スケッチしている横をカメラを首から下げた方が通りかかった。建築関係の仕事をしておられ、自治体関係者などに「土佐漆喰」や「水切り瓦」について技術的アドバイスされているとのことだった。いただいた名刺には「巡視委員」とあった。





吉良川B(高知県室戸市)09.09.08      F6



「水切り瓦」のあるひときわ目を引く土蔵に「蔵空間・茶館」との看板が出ていた。軽食もあるとのことだったので、ここで昼食にした。オーナー夫妻は一時住んでいた阪神間からUターン、実家の建物を利用してライブハウスを兼ねた喫茶店と遍路宿を開いたとのことだった。このお宅もかつては備長炭や薪の商売を手広くやっておられたという。食後に玄関の式台に座って邸内をスケッチするという贅沢をさせてもらった。

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