兵庫県

龍野(たつの市龍野町)

龍野は古くから城下町として栄え、江戸時代の町割りが今に残っているとされる。右の写真は町なかに掲示してあった古地図だが、下の俯瞰スケッチと比べると、なるほどとうなずける。醤油や素麺の生産が盛んで、そうした地場産業がこの町の豊かさを支えている。また童謡「赤とんぼ」の作詞者、三木露風の生誕地としても知られる。1951年(昭和26年)に「龍野市」が誕生したが、2005年に周辺の町と合併して「たつの市」となり、旧市街地はたつの市龍野町に戻った。

城下町・龍野(たつの市龍野町)2012.04.18       36×56cm
私が俯瞰スケッチ好きという話題から、どなただったか、掲示板に「龍野の国民宿舎・赤とんぼ荘から素敵な俯瞰が見られますよ」という投稿をいただいた。春のスケッチ日和に誘われて龍野へ行き、町を見下ろす高台に建つその「赤とんぼ荘」へ直行した。ところが宿舎の駐車場からは町並みがまったく見えない。少し慌ててフロントで聞くと「階段の踊り場から見えますよ」という。赤とんぼ荘の8階は展望レストランになっていて、その出入り口の階段の踊り場へ出ると、目の下に城下町の旧市街が広がっている。嬉しくなって描きに描いた。上から眺めると、旧市街地にはお寺の数がとても多いのに気がついた。

醤油蔵のある町(たつの市龍野町日山)2012.04.18     F6
国民宿舎「赤とんぼ荘」の8階から北側に古びた醤油蔵が見えたので、山を下りてその場所へ行ってみた。「ヒガシマル醤油第二工場」という看板が出ているが、どうやら今は醤油造りをしていないらしい。旧市街地からみると町外れに当たる場所だが、この周辺にも古い町並みがあり、寅さん映画の撮影が行われたという立派な民家もあった。龍野が舞台になったのは1976年公開の第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」。太地喜和子の演じた芸者の明るさがとても印象に残る楽しい映画だった。

醤油資料館あたり(たつの市龍野町大手)2012.04.18     F6   
龍野の城下町を周辺から攻めるような感じで、いよいよ町の中心部・城跡近くの大手へやってきた。ヒガシマル醤油旧本社のレンガ造りの建物が「うすくち龍野醤油資料館」という施設になっている。道路の向かい側の木造の建物は同社の元本社工場だそうだ。現在の本社や工場は揖保川の対岸へ移転している。龍野での醤油造りは16世紀に始まったといい、主要産地の中でも龍野は上方料理には欠かせない「うすくち」を特色として育っていった。資料館の入場料は10円という安さだった。

菊屋商店付近(たつの市龍野町本町)2012.04.18     36×51cm
龍野の城下町には町なかを細い川が流れ、その川に面して白壁の土蔵造りやお寺が並ぶ風景が印象的だった。本町に「合名会社菊屋商店」という看板を掲げた重厚な民家があり、これを描くことにしたが、この場所にも細い川が流れていて、スケッチポイントの選定にずいぶん迷った。道路の向かい側にも同じ店の建物があり、見事な木製の看板が揚がっていた。酒や醤油の販売をしている老舗のようである。

ヒガシマル醤油第二工場あたり(たつの市龍野町日山)2012.04.18     F6
春のスケッチの楽しさは秋と違って日が長いことである。5時を過ぎたがまだまだ明るいので、もう1枚欲張ることにした。車で移動中に気になったポイントへ行ってみたが、絵になりそうもない。仕方なく昼過ぎに描いたヒガシマル醤油第二工場付近へ再び移動して、ポイントを探した。付近には面白そうな町並みもあったが、日没時間切れになりそうなので、醤油工場だけに焦点を当て、急いで描いた。

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