滋賀県

円山(近江八幡市円山町)

近江八幡市郊外の円山町は琵琶湖の内湖の一つ「西の湖」に面した集落。周辺にヨシ原が広がる水郷地帯で、国の「重要文化的景観」の第1号に選定されている。水郷巡りの遊覧船の基地があり、古くからヨシズなどヨシ加工品の産地として栄えてきた。

「西の湖」の春@(近江八幡市円山町)2013.04.09        36×51cm   Fさん蔵
多くの人がスケッチしている円山町へ一度行きたいと思っていた。しかし、広々としたヨシ原や水路だけの題材はとても私の手には負えないと思い、尻込みしていた。ところがこの近くにお住いのAさんが、丸山集落の俯瞰を描かれた。家並みの向こうには「西の湖」が広がるといういかにも私の好みの景色である。もともと、滋賀の風景ならお任せというYさんが見つけてこられたスケッチポイントで、日影はなさそうだし、ヨシ原が黄金色に輝いているうちの方がよいと思い、好天の日を選んで車を走らせた。「西の湖」の向こうの低い山は織田信長が城を築いた安土山である。

「西の湖」の春A(近江八幡市円山町)2013.04.09        36×51cm
この日、丸山集落の俯瞰を続けて2枚描いた。俯瞰スケッチは手間がかかるので、よほど失敗でもしない限り同じところで2枚描くことはないが、この場所はとても魅力的だったので、もう1枚描きたくなった。気分を変えるため、椅子を置く場所を少し移動し、鉛筆も1枚目の4Bから6Bに替えた。ただし、紙は残念ながら同じものしか用意していなかったので、2枚を比べてもあまり違いが目立たない。

円山の小道(近江八幡市円山町)2013.04.09        F6
円山の俯瞰を描いたのは高台にあるお寺の墓地からだったが、そこから集落へ下りたところに土蔵が並ぶ小道があった。このポイントもYさんが絵にしておられる。ヨシなどの保管倉として使われている建物らしく、屋根裏からエリ漁などに使う棒杭が覗いている。西の湖とともに生きてきた円山らしい風景と思ってスケッチしたが、趣のあるYさんの作品とは似ても似つかぬものになってしまった。

水郷・円山@(近江八幡市円山町)2013.04.09        F6
せっかく円山へ来たのだから次は水郷らしい風景を描きたかった。ずいぶん歩き回った結果、水郷めぐりの船乗り場があったので、そこで妥協することにした。水郷めぐりの船乗り場は何か所かに分かれていて、この場所は円山集落の北西の外れ。県道の橋の上に陣取ったが、道幅がそれほど広くないのに、なぜか大型ダンプがよく通る。橋の欄干とガードレールの切れ目に体を割り込ませてスケッチしたが、車が通るたびに冷や冷やもの。のんびりとした水郷めぐりの雰囲気とは程遠いスケッチ環境だった。

水郷・円山A(近江八幡市円山町)2013.04.09        F6
もう一カ所の遊覧船乗り場近くへ行くと、いかにも水郷らしい風景が広がっていた。アシ原は最近焼かれたようで真っ黒。水辺には小舟が浮かび、桜も満開である。しかし、景色の素晴らしさが私の表現能力を大きく上回っており、欲張りな材料が消化不良に終わった。

ヨシの加工場(近江八幡市円山町)2013.04.09        F6
再び円山の集落内に戻り、スケッチポイントを探しながら歩いた。ふと、刈り取られたヨシがたくさん立てかけてあるお宅が目に留まった。右側の作業場の中におられる人に「スケッチさせてもらっていいですか」と声をかけると、即座に「いいよ」との返事が返ってきた。後で「家が傷んでいるので、本当は絵にされるのは嫌なのだが、皆さんがここでよく描かれます」とこぼしておられた。帰宅後ホームページで確かめると、確かにひまつぶしさんもYさんも同じ場所で描かれていた。

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