奈良県

吉野山(吉野町)

吉野山に行くなら夏である。吉野は春の桜の季節が一番なのはいうまでもないが、とてもスケッチできるような雰囲気ではなさそう。紅葉の秋も同様、冬は寒い。その点、夏の吉野はひっそりしていて、贅沢にも車で蔵王堂辺りまで行くことさえできる。

金峯山寺仁王門から(吉野町)08.07.06   36×51cm
吉野山の中心は金峯山寺(きんぷせんじ)である。その本堂の蔵王堂は南を向いているが、その隣にある仁王門は北を向いている。本堂と仁王門は同じ方角を向いているのが普通だと思うが、ここではなぜそっぽを向いたのか。3枚目はその仁王門から門前町の家並みを描いた。門を描かずに門から描くのは、信仰心のなさか、へそ曲がりのせいだが、ありがたいことに大きな門は深い日陰を作っており、涼風もよく通る。門前町には新しい建物もかなり交じってはいるものの、古びた屋根の連なりが面白いと思った。

吉野葛の老舗A(吉野町)08.07.06 36×51cm
2枚目は「韋駄天山」の上り口にある吉野葛の老舗を。軒を借りた店は吉野杉の真新しい展示場で、杉材のとてもよい香りが流れてくる。吉野の商店街には西日避けの天幕があるが、スケッチを始めたときに葛屋さんの奥さんが天幕全体をバランスよく広げてくれた。夏とあってどの店も商売は暇そうで、いろんな人が絵を覗きにやってくる。世界遺産に登録されてから、商店街でも天幕について賛否両論があるそうだが、「他では見られない独特な日よけなので、ぜひ残してほしい」と強調しておいた。下の@の絵を描いてから15年経っている。

韋駄天山から蔵王堂(吉野町)08.07.06  F6
突然やってきた猛暑日に、多少涼しいのではないかと、思い立って吉野へ。しかし日向はやはり暑いので、木陰を求めて、蔵王堂の展望ポイントでもある小高い「韋駄天山」へ上った。役行者(えんのぎょうじゃ)を祀った小さな祠があり、サクラの木の下に入るとそよ風が実に気持ちよい。「明日がお祭」とかで地域の人が草刈りや提灯を吊るす作業をやっておられる。「邪魔になりませんか」と許しを得てスケッチを始めたら、「これも縁ですから」と皆さんが用意していたコーヒーやパンが私のところにも届いた。

蔵王堂あたり(吉野町)02・09・23  F8
もし桜のころなら、蔵王堂の見えるこんな場所で大胆にも絵を描くなんて信じられないことだ。西日を避けるための天幕が出るのが珍しい。

吉野葛の老舗@(吉野町)93・08・12 F8
ロープウエーの駅前辺りから蔵王堂のある金峯山寺を経て「上千本」方面に向かう馬の背のような一筋の道の両側にはみやげ物などを扱う店がずらっと並んでいる。絵は名物・吉野葛の「久助堂」。胃腸薬の「陀羅尼助」を扱う店もあった。

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