奈良県

八木(橿原市)

橿原市といえば「今井町」の町並みが有名だが、近鉄八木駅に近い北八木町、八木町、南八木町の町並みも今井町に引けをとらない。この町の中心「札の辻」は、かつて難波津と飛鳥京を結んでいた「横大路」と、藤原京と平城京を結んでいた「下ツ道」の交差点に当たる。歴史の変遷を超えて古代の道筋がほぼ原形を保っていることは驚異に値する。

北八木町A(奈良県橿原市)2012.09.23        F6
今井町の知人から「一度飲みましょう」との誘いを受けたが、今井町は先日出かけたばかりなので、八木地区に行った。とりあえず南北に通る「下ツ道」に面した町並みを描いた。この場所でのスケッチは04年に開催した第2回個展の案内状に使ったが、町並みは当時と全く変わっていなかった。

八木町3丁目@(橿原市)2012.09.23        F6
八木地区を東西に通る「横大路」はその後「初瀬街道」、「伊勢街道」などと呼ばれ、長谷寺や伊勢神宮への参拝客で賑わった。南北の「下ツ道」との交差点だった「札の辻」から東へ行ったあたりにも古くからの街道らしい重厚な家並みが続いているので、2枚目のスケッチポイントに選んだ。時々、雨がパラつくあいにくの天気だったが、日差しが強くない分、まあいいいかとの気分である。

八木町3丁目A(奈良県橿原市)2012.09.23        F6
「札の辻」の角にあった旧旅籠の平田家(橿原市指定文化財)は12年7月、「八木札の辻交流館」という市営の施設になった。そこから初瀬街道(伊勢街道)を少し東へ行ったあたりでもう1枚描いた。絵の手前、初瀬街道に面して古い民家が並び、その間から北へ伸びる細い路地の様子が面白いと思った。

南八木町A(奈良県橿原市)      2012.09.23        F6
南北に通じる「下ツ道」を南へ行くと、やがてJR桜井線の踏切を渡る。すぐ西側には畝傍駅があり、さらに南へ行くと「おふさ観音」がある。その近くまで歩いてみたが、スケッチポイントが見つからず、桜井線の踏切まで引き返して、もう1枚描いた。以前、踏み切路の北側から南向きの描いたことがある(南八木町@)が、この狭い道沿いにも伝統的な家屋が軒を連ねている。

八木町A(橿原市)07.10.06       36×51cm
秋晴れでどこへ行こうか迷った結果、八木へ行った。土曜日なので当てにしていた市役所の駐車場が閉まっており、今井町の駐車場を使わせてもらった。近所の人が「今井町でスケッチする人は多いが、ここでは珍しいですね」という。

八木町B(橿原市)07.10.06       31×41cm
2枚目は上の八木町Aの絵の真ん中にある路地を描いた。下ツ道の道幅が狭く、引きがないので家が絵からはみ出してしまう。下の八木町@を描いてから13年経っているが、路地の風景はまったく同じ。

北八木町@(橿原市)04・02・08       36×51cm
日当たりに配慮して北八木町のこのポイントを選んだが、描き始めるとやはり寒い。絵を覗きに来たご婦人が「寒いでしょう」とご自身が背中に張っていた使い捨てカイロならぬ「使いかけカイロ」をくれた。「カイロを使うのは初めて」と言ったらわざわざ張り方を教えてくれた。暖かいプレゼントだった。

南八木町@(橿原市)04・03・19       36×51cm   
八木町から南へ、JR桜井線畝傍駅ホーム東側の踏切道を描いた。何の変哲もない踏切道に見えるが、実はこの道はかつての「下ツ道」というとても由緒ある道である。遮断機やら鰻屋の看板など小物がいっぱいで、描いていて楽しかった。不思議なことに「絵が好きだ」という人たちが何人も通りかかり、やがて路上で絵画談義が始まった。

八木町@(橿原市)94・09・10       F8
南北に通る「下ツ道」を歩くと、八木町で姿のよいこの路地が目に止まる。普通はどこかに新しい建築が混じるものだが、この路地は隅から隅まで古い建築ばかりで、全体がよく整っている。

札の辻(橿原市)94・09・10        F8
この町の中心部にある「札の辻」。左右に走るのが「横大路」、前後に通るのが「下ツ道」である。交差点の反対側に赤いポストがあるのをカーブミラーに描いておいた。(10年後の04年に訪ねたら、正面の家は取り壊され、ガレージになっていた.。左手前の建物「旧平田家」は12年7月に「八木札の辻交流館」となった)

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