奈良県

都祁吐山町(奈良市)

都祁は最近でこそ西名阪道路が通じて便利になったが、大和高原の中央に位置し「秘境」とさえ呼ばれた時代もある。しかし、大和地方の中でもとくに早い時期から人が住み着いた地域で、村内から縄文、弥生、古墳時代の遺跡が発見されている。独立した村だったが、05年4月に奈良市の一部となった。

大和富士遠望(奈良市都祁吐山町)2011.05.09     36×51cm
都介野岳を探しながら車を走らせていて、以前スケッチしたことのある場所に行きついた。かつての都祁村吐山(はやま)地区である。そこから田んぼの向こうに三角形のかっこよい山が見えるので、田植えの準備をしていた人に「あれが都介野岳ですか」と聞くと「あれは大和富士」という。榛原との境にそびえる山で、別名は額井岳。目的としていた都介野岳は後回しにして、まず大和富士を描くことにした。しかし、手前の家並みにこだわっているうちに、大和富士は画面からはみ出してしまった。画面の左端が以前にも描いたことがある大和棟、右端上に半分だけ見えるのが大和富士(額井岳)。

吐山の醤油屋さん(奈良市都祁吐山町)2011.05.09     F6
以前にも描いたことのある都祁・吐山の素敵な大和棟のお宅は醤油屋さんである。母屋の右側にあるのが醤油蔵らしく、その壁に赤い馬を描いた大きな看板が掲げられており、目を凝らすと「清馬しょうゆ・倉西醤油醸造場」との文字が読める。前回に続き、今回もその姿のよさに無視できず、遠くから断りもなく描かせてもらった。

吐山の田んぼ(奈良市都祁吐山町)2011.05.09     36×51cm
山裾に家々があり、家の前に田んぼが広がるというのが典型的な日本の農村風景である。吐山(はやま)地区で、周囲を見渡すとお寺の裏山に墓地があり、見晴らしがよさそうなので上ってみた。目の前にそうした典型的な風景が広がっており、田んぼではすでに田植えの準備が終わっていた。

吐山の造り酒屋さん(奈良市都祁吐山町)2011.05.09     F6
最初に吐山地区に着いた時、周囲を見渡して、上の醤油屋とともに、北側斜面のいかにも旧家らしい煙り出しのあるお宅が印象に残った。後で訪ねてみると、敷地内に酒蔵もあり、酒造業らしい。小高い墓地から眺めると、造り酒屋さんの下手の斜面に広がる家々の様子も面白いと思った。

吐山(都祁村=当時) 02・11・03    36×51cm
七ちょめさんのホームページを眺めていて、この家の写真が目に止まった。さっそく出かけてみると、吐山地区の清水というところに、季節は違うものの写真とまったく同じ家があった。紅葉も今が盛り。早速描き始めたが、雨もしぶしぶ降ってきて予想を超えた寒さ。さすがかつて天然凍り豆腐が名産だった村である。なんとかスケッチだけ終えて、車の中に戻って彩色したが、しばらく体の震えが止まらなかった。

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