奈良県

大宇陀(宇陀市大宇陀)

大宇陀も奈良県を代表する古い町並みで知られる。城下町の姿を残す西口関門(黒門)もあるが、吉野葛や薬草、和紙などかつてこの町の経済を支えた商品を扱っていた家々が落ち着いた町並みをつくっている。06年1月、大宇陀町は隣の榛原町などと合併して宇陀市となった。また同年4月、大宇陀の町並みは「宇陀市松山」の名称で国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

   
  大宇陀・松山街道(宇陀市)21.02.11  36×51p   
  また気温の高い日になったので、少し遠いが大宇陀まで足を延ばすことにした。大宇陀へは2012年1月以来9年ぶりである。前回は読売テレビのロケ隊に出会い、スケッチ姿が長々と取り上げられるというハプニングがあったが、今回はコロナ禍中だけに、たまに散策する観光客の姿があるぐらいで、町中ひっそりとしていた。この絵は町の北の方にある「まちなみギャラリー石景庵」の前から北の方を眺めたもの。石景庵も営業休止中であった。この北隣にある「薬の館」を描くつもりでこの場所へ行ったが、どうもその気にならず、以前描いたことのあるアングルにした。町を南北に貫くこの道は「上町通り」または「松山街道」も呼ばれるらしい。  
 
 
   
  大宇陀・松山街道A(宇陀市)21.02.11  F6  
  同じ松山街道のほぼ同じ場所で今度は南向きに描いた。「きみごろも」という看板を上げた和菓子屋「松月堂」と奈良漬けの樽を看板代わりに掲げた「いせ弥」が並んでいて、町並みに変化がある。いせ弥は定休日でシャッターを降ろしていたが、営業中の松月堂の方はひっきりなしに来客があった。  
 
 
   
  大宇陀・神楽岡神社から(宇陀市)21.02.11  36×51p  
  松山街道を南へ歩くと左側に神楽岡神社への上り口があり、石段を上がったところに鳥居が見えた。上ってみると陽が当たり暖かそうだし、大宇陀の町並みが見下ろせるので、鳥居の下で1枚描く気になった。帰宅後ネットで確かめると、ひまつぶしさんが09年にまったく同じ場所から描いておられた。  
 
 
   
  大宇陀・久保本家酒造(宇陀市)21.02.11  F6  
  大宇陀の町並みを南に抜けた辺りを「酒蔵通り」と呼ぶらしい。といっても2軒の酒蔵があるだけだが、その内の1軒・久保本家酒造の蔵が宇陀川に面して建っている。ちょうど車を止めた道の駅近くのため、朝から目に留まっていたが、逆光なので、午後に描くことにしていた。  
 
 
松山西口関門(宇陀市大宇陀)2012.01.18     36×51cm 
この日は気温が多少高いとの天気予報だったので、少し遠い大宇陀まで出かけた。しかし、現地についてみると前日に積ったらしい雪があちらこちらに残っていて、いかにも寒い。とにかく日向を探し、「西口関門」あたりで描くことにした。この門は通称「黒門」と呼ばれ、松山城城下町への出入り口として400年前に造られ、国史跡に指定されている。スケッチしていると、テレビのロケ隊のご一行がどやどやとやってきた。聞けば読売テレビの「街かど★トレジャー」という番組の収録とか。寒い中でもの好きにもスケッチをしているのが珍しかったのか、しっかりとインタビューされた。2月1日夕方6時20分ごろから放映された。
読売テレビの「街かど★トレジャー」で紹介された上の絵。
(画像提供:Oさん)

下町通り(宇陀市大宇陀)2012.01.18     36×51cm
大宇陀で重要伝統的建造物群保存地区に選定されている松山地区には上町通り(国道370号)と下町通りという並行した2本の通りがある。これまでは重厚な建物が多い上町通りでしかスケッチしたことがなかったが、下町通りにも古い家並みがあり、お寺の屋根がアクセントになって面白いので、初めてここで描くことにした。通りの向こうから先ほど出会ったテレビ局のロケ隊が賑やかにやってくる。人通りもほとんどないので、ロケ隊の皆さんを絵の賑やかしに描き込んでおいた。



「本善食堂」前から(宇陀市大宇陀)2012.01.18     F6









大宇陀の重伝建地区を通る「上町通り」と「下町通り」は何本かの短い路地で結ばれて、いずれもきれいに整備されている。この絵の正面の家は昔は紙問屋だったという「山邉家」で、このあたりは大宇陀の町並みを代表する一画としてよく写真で紹介されている。この路地に「本善食堂」という昔ながらの食堂がある。入るにはちょっと勇気がいる雰囲気だが、思い切って暖簾をくぐった。おばあさんが1人で店番しておられる。壁に張り出されたメニューの中から一番無難そうな親子丼を選んだが、味、量、価格ともに満足であった。そういえば、以前大宇陀でスケッチした時もこの食堂で昼にした。店の前の路地は日が当たらず寒そうだし、ちょっときれいすぎると思ったが、せっかくだから食堂を出たところで描いた。

「上中郵便局」あたり(宇陀市大宇陀)2012.01.18     36×51cm
大宇陀での4枚目は町並みの北の方にある「上中郵便局」あたりを描くことにした。大宇陀には道の駅近くに「大宇陀郵便局」があるが、上中郵便局は簡易郵便局で、古い町家をそのまま局舎として利用している。珍しくていかにも絵になる素材なので、以前、同じような場所でスケッチしたことがある。その絵がありがたいことに嫁入りしてしまったため、もう1回描いてもいいかと思った。

大宇陀F(宇陀市大宇陀)06.09.27       36×51cm
大宇陀は吉野葛の集散地でもあり、「森野吉野葛本舗」「黒川本家」というともに創業400年を誇る老舗2軒が向かい合わせで商売を競っている。そのうちの1軒の軒下を借り、両方の店をスケッチした。同行のFさんは顔を立てて両方で葛粉を買ったらしい。「1グラム当たりの単価が33銭違った」そうで、さすが主婦。

大宇陀E(宇陀市大宇陀)06.09.27      36×51cm
町並みの中心部にできた「まちなみギャラリー・石景庵」の玄関に椅子を置かせてもらって、北向きに描いた。この町は古い町並みにもかかわらず道幅が広いが「今は道の両側にある溝が昔は道路の中央にあったため」ということを初めて聞いた。古い絵図ではそうなっているらしい。京都で見るのとは少しイメージの違う犬矢来が印象に残る。

大宇陀D(宇陀市大宇陀)06.04.07      36×51cm
天気予報が外れていい天気。1日儲けたような気分で、ちょっと遠いが大宇陀まで足を延ばした。05年7月に訪問した時、日当たりがよすぎて描けなかったポイントでスケッチした。椅子を置かせてもらった場所もかつての商家が「まちづくりセンター・千軒舎」につくり変えられている。また、スケッチした町並みも手前の2軒は店を閉じ、今は人も住んでいないという。
大宇陀の道の駅からすぐのところに立ち寄り温泉施設の大宇陀温泉「あきののゆ」がある。06年夏、同施設内のレストラン「おときや」のメニューの表紙に「大宇陀D」の絵が採用された(写真)。施設の運営が指定管理者制度により市から民間に委託されたのを機に「何か新しい工夫を」とのアイデアらしい。「あきののゆ」は、ぬめりがあってとてもいい湯だった。

大宇陀C(大宇陀町)05.07.16      36×51cm   
梅雨明けを思わせる好天気。南北に長い町並みなら午後になると西側に影ができ暑さを避けられると判断して、久しぶりに大宇陀へ行った。東側の家並みだけに的を絞り、スケッチポイントを探したら、古い町屋をそのまま郵便局舎として使っておられるお宅があり、これを描いた。

大宇陀B(大宇陀町)01・09・01 36×51cm
6年ぶりに大宇陀を訪ねた。この町のシンボルともいえ、その姿を描くために通った「細川家」が観光施設になっていたのにはがっかりしたが、それ以外は町並みそのものは大きく変化していなかった。
町の南のはずれに道の駅ができ、そこへ車を止めたため、これまで見落としていた町の南側、国道166号線と370号線の交差点あたりにも魅力的なスケッチポイントがあるのを知った。

大宇陀A(大宇陀町)94・05・28 F8
薬種問屋だった細川家の唐破風を付けた大型の看板はひときわ目を引く。このころは人が住んでおられ現役の民家だったが、今は「薬の館」として一般公開されている。

大宇陀@(大宇陀町)94・05・28 F8
人が住まなくなると家はもろい。雨漏りで瓦の下の土が流されて棟にうねりが出、やがて崩壊につながる。町の目抜き通りを歩いていて、無残に崩れ去ろうとしている旧家の土蔵を見つけ、ブロック塀越しにスケッチした。

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