奈良県

名柄(御所市)

御所市中心部から3、4`南に「名柄」の集落がある。大阪・富田林から水越峠を越える国道309号線でと奈良から和歌山に通じる国道25号線との交差点に近い。集落内を南北に貫く街道は高野街道または一言主神社道とも呼ばれ、昭和初期には旅館やいろんな業種の商店など80軒もの店が並び、映画や芝居を催す「大正座」という劇場まであったという。今では人通りもほとんどない寒村で、空家や空き地が目立つが、所々にかつての繁栄を物語るどっしりとした家々も残っている。
 
 
   
  「郵便名柄館テガミカフェ」(御所市名柄)2020.04.03     F6  
  名柄地区に「郵便名柄館テガミカフェ」という施設があり、2020年5月3日に開館5周年を迎える。その記念イベントとして私のスケッチ展を開催していただくことになった。この施設はかつて名柄郵便局として使われていた建物をリニューアルし、郵便資料の展示とともに郷土料理が味わえるカフェ&レストランとして一般社団法人吐田郷地域ネットが運営している。このページに掲載しているスケッチの数々が、同館運営責任者Kさんの目に止まり、5周年記念イベントとして、それらの絵を壁面に展示したいとの申し出を受けた。この日はその打ち合わせと新作スケッチを兼ねて名柄を訪問した。(「郵便名柄館」5周年記念展の記録のページへ)  

   
  「葛城酒造」と重文「中村家」(御所市)2020.04.03     36×51p  
 
名柄へ展覧会の打ち合わせに行ったついでに、折角だから「葛城酒造」と「中村家」の建物の組み合わせを描いた。15年も前に描いた「名柄D」と同じ構図である。スケッチ現場に郵便名柄館のKさんから連絡を受けた御所市役所まちづくり推進課のMさんもやって来られた。今度の展覧会を御所市が運営するFacebookなどで応援しようというものだが、話しているうちにMさんとは初対面ではないことが分かった。2014年9月、同じ御所市内で古い町並みが残る今住地区でスケッチしているとき、彼岸花の咲くたんぼ道を御所市のキャラクター「ゴセンちゃん」(→の写真)がのこのこやって来てびっくりしたことがあるが、その時に「ゴセンちゃん」をエスコートしていたのがMさんだという。これまた奇遇であった。
 
 
 
   
  土塀のある路地(御所市名柄)2020.04.03     F6   
  まだ時間も早いので、御所市名柄でもう少しスケッチを続けることにした。中村家と葛城酒造が並んで建つ建つ高野街道の交差点を東に折れて進むと土塀が続く路地があった。かつて気に入って何回もスケッチしたSさんのお宅が建っていた広大な敷地を囲む土塀である。この敷地の一部を郵便名柄館が借りて、その来客用駐車場として使っている。  
 
 
   
  東名柄から葛城山(御所市東名柄)2020.04.03     F6   
  御所市は葛城山の山麓に開けるため、市内のどこからでもその山容がよく見える。少し東へ歩き、ふと見上げると葛城山の山容が綺麗なので、もう1枚描く気になった。いつの間にか地名は東名柄に変わっており、正面のお寺は浄泉寺といい、手前に大きな倉庫が建っている。  
 
 
名柄・高野街道(御所市)2011.04.29     F6
名柄の集落は南北に通る1本の細い道に沿って開けている。このページの掲載している絵もすべてその道沿いで描いたもの。この絵は集落の南端にある葛城酒造(Aの絵)からさらに南を見た風景である。今は国道24号線や山麓バイパスを通る車がほとんどで、さらに京奈和道路まで建設中だが、かつてはこの細い道が五條方面に通じる主要道路だったのであろう。

名柄F(御所市)2011.04.29     36×51cm
名柄ではSさんという方のお宅の姿が気に入ってたびたび描きに行っていた。しかし、09年に取り壊されて更地になってしまった。もう1軒、名柄小学校の近くにとても姿のよい大和棟のお宅があり、以前から気になっていたので、この機会に描くことにした。Sさんと親せき筋に当たるお宅のようである。屋敷内にある巨木がこの家の長い歴史を物語っている。

名柄E(御所市)2011.04.29     F6
久しぶりに名柄を訪問した。下の絵を描いたのはもう6年も前になる。中心部にある理髪店の横の路地に入り込むと、向かい側のアングルが気に入った。煙出しのある古い民家もよいが、板張りの洋館もかつての町の繁栄ぶりを物語っている。今は使われていないが、名柄郵便局だった建物らしい。

名柄D(御所市)05.08.26      36×51cm
久しぶりに名柄に行った。過去に何回もここでスケッチしているが、残念ながら、豊かそうに見えるこの町も何となく勢いを失い「衰え」がみえた。右が重要文化財に指定されたお宅、その向こうが造り酒屋さん。子供たちはよく教えられているのか、必ずあいさつをして通り過ぎていく。

名柄C(御所市)01・11・04     36×51cm  ●
重要文化財に指定されている「中村家」を訪ねたのがこの集落へ来たきっかけだった。しかし、美しく修復されている中村家より、その向かい側にあるこの家の姿に惚れてしまった。茅葺屋根にはすでにトタンがかぶせてある。そういう意味では評価しない向きもあるかもしれないが、風格のあるこの家のたたずまいを描きに、何回この村を訪れたことか。02年4月に開いた初めての個展の案内状にこの絵を使った(下の絵)。

名柄@(御所市)92・05・10 F8
この家の所有者Sさんは、日ごろ大阪市内に住んでいて、たまに帰ってきて、家に風通しをしてしておられるという。一度家の裏側の庭に入れてもらったことがあるが、贅をを尽くした造りだった。「昔は村の若い娘がみな、あそこで裁縫を教えてもらったものですよ」と通りがかりの昔の娘さんが話してくれた。



一目ぼれして何回もスケッチにかよったS氏宅だったが、09年11月の悠彩会展に来られたOさんから「取り壊しになった」とお聞きし、写真を送っていただいた。SさんはOさんの親せき筋に当たるという。(左側が重文・中村家住宅)

この地区にある酒造会社の建物。上の絵は通行止めという看板の前で描いた。


名柄A(御所市)92・05・10 F8

名柄B(御所市)92・05・17    F8    
この構図には何回も挑戦したが、Sさん宅の巨大な屋根がうまく表現できない。この絵も失敗作である。

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