奈良県

五條新町(五條市)

吉野川沿いに開ける五條市の中心部を通る旧紀州街道に沿った「五条新町」は、2010(平成22)年12月に全国で88番目の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。江戸時代初期に城下町が起源となり、その後、紀州街道に沿った街道町として発展した。五條1丁目、本町2丁目、新町1、2丁目、二見1、4丁目を貫く旧紀州街道は、新町通と呼ばれ、通りに面して古い町家がずらりと連なっている。

   
  五條・新町通C(五條市本町2丁目)2020.06.17    F6  
  梅雨の中休みのような好天になったので、思い立って少し遠いが五條市の新町通へスケッチに出かけた。五條市へは実に11年ぶり。とりあえず「鉄屋橋」を渡ったところの軒先の日陰に座り、左手前の「市口薬局」とその向こうに見える造り酒屋「山本本家」、焼き餅屋の「餅商一ツ橋」などの建物を描いた。何回も描いたことのあるお気に入りの構図。この狭い新町通を車が頻繁に通る。  
 
 
   
  五條・西川沿いの民家(五條市五條1丁目)2020.06.17    36×51p  
  五條市の本町と五條の間を西川という狭い川が曲がりくねって流れており、鉄屋橋の下を潜り吉野川に合流している。その川に面して「前田道具店」という店の複雑な建物が建っており、背後には造り酒屋の煙突も聳えていて、絵になる風景である。川の対岸にある宝満寺というお寺の門の日陰に入らせてもらって、2枚目にその風景を描いた。  
 
 
   
  五條・まちや館付近(五條市本町2丁目)2020.06.17    F6  
  午後になり移動した日陰を探して新町通を少し西へ行き、「まちや館」という公開施設が見える辺りで描いた。道路の左側の電柱の向こうにあるのが「まちや館」で、その家は、戦後、第1次吉田内閣の司法大臣などを務めた政治家・木村篤太郎氏の生家だそうである。  
 
 
   
  幻の「五新線」遺跡(五條市新町1丁目)2020.06.17    F6  
  新町通を西へ行くと、やがて”幻の鉄道”と呼ばれる旧国鉄・五新線の路盤と交差する。紀伊半島を縦断し五條と和歌山県の新宮を結ぼうという五新線が初めて予定線となったのは1922年、大正11年のことだった。曲折を経て1939(昭和14)年に工事が始まったが、太平洋戦争の激化で中断。1957(昭和32)年になってようやく工事が再開された。1959年に五條〜城戸(現在の五條市西吉野町城戸)間の路盤が完成したが、その後、1979(昭和54)年に工事予算が凍結され、1982(昭和57)年になって工事全体が凍結され、結局、五新線そのものが陽の目を見ることはなかった。たびたび五條へスケッチに行っているのだから、一度はこの遺跡を描いてみたいと思っていた。  
 
 
   
  「山本本家」と「一ツ橋餅商」(五條市五條1丁目)2020.06.17    F6      
  午後遅くなって最初に描いた鉄屋橋のところへ戻ってくると、造り酒屋の「山本本家」とその向かい側の焼き餅屋「一ツ橋餅商」が描ける場所に日陰が出来ていた。「一ツ橋餅商」の建物は五条新町のシンボルとも言え、この日はいかにも営業しているような雰囲気で、のれんまで出ていたが、入り口にはしっかりと南京錠。ネットで調べると、2018年11月に閉店したようで、雰囲気だけ演出しているようである。たまたま10年前の最後の描いた絵とまったく同じアングルになった。  
 
 
五條・新町通りB(奈良県五條市五條1丁目)09.06.26  F6
豪壮な「山本本家」と向かい側の「餅商一ツ橋」の建物の対比が面白く、ここは五條のスケッチの定番ポイントともいえる。幸い日影で描けた。

五條・新町通りA(奈良県五條市五條1丁目)09.06.26   36×51cm
古い町並みが残る新町通でも空き地が目立つようになったが、「山本本家」を臨むこのポイントは旧態をよく維持している。せっかく遠路を五條まで来たので、2枚目は涼しい橋の下から出て新町通りで描くことにした。しかし、軒下の小さな日影に入り込んでスケッチしているうちに、その影はしだいにやせ細り、日向に放り出される破目となった

五條・西川C(五條市五條1丁目)09・06・26  F6
暑い時のスケッチは橋の下からに限る。07年に下の絵を描いた時、山本本家の酒蔵と酒蔵をつなぐ橋が「西川」をまたいでいるのを見つけ、夏になったら出かけようと思っていた。実際に座ってみると、酒蔵の風景は京都・伏見でも見られないぐらい変化に富んで魅力的であった。念のため蚊取り線香を用意した。

五條・西川A(五條市本町2丁目)07.03.21    36×51cm
「春分の日」らしい暖かな1日、再び五條へ。西川の河原(川底のイメージだが)に陣取って川にはみ出した家々を描いた。西川はこのすぐ下流で吉野川に合流しているが、この絵の右側に描き込んだ古道具屋のご主人によると、台風などのときはこのあたりまで水が逆流してくるそうで「伊勢湾台風のときは床上まで浸水した」とか。河川改修もそうした被害を未然に防ぐため行われたらしい。

五條・西川B(五條市五條1丁目)07.03.21    31×41cm
上の絵を描いてから、宝満寺の門前で向かい側の古道具屋さんを描いた。ご主人がまたやってきて「造り酒屋の煙突も見えるし、風情があるでしょう」という。何となく絵になるお宅である。

五條・新町通@(五條市本町2丁目)07.03.14  36×51cm
五條の古い町並みのなかで、このアングルがやはり一番変化に富んでいて面白い。玄関先をお借りした家のご主人に「ここでスケッチする人が多いでしょう」と聞いたら「ええ、まあ」という答え。多少は迷惑をおかけしているのかもしれない。私自身も下の五條Cの絵を描いて以来2度目だが、日付を見ると13年ぶりのことになる。左側の薬屋さんが、黒漆喰から白漆喰に替わっているのに気がついた。

五條・西川@(五條市五條1丁目)07.03.14     31×41cm 
新町通にある餅屋さんは「西川」に大きくはみ出して造られている。いつかは川側からこの餅屋さんを描きたいと思っていた。しかし、足場が悪く、川に入らない限り描くことができなかった。ところが今度行ってみると河川改修で遊歩道のようなものが造られ、スケッチ場所が確保されていた。

五條E(五條市五條1丁目)05・02・25 36×51cm
久しぶりに本格的な古い町並みを描きたくなった。まだ寒いので、日当たりの良い国道168号の歩道からスケッチした。五條へは02年5月以来、ほぼ3年ぶりの訪問である。いつも閉まっていて気になっていた「一ツ橋餅商」が営業していたので、昼食代わりに餡入り焼き餅を買った。

国の重要文化財に指定されている栗山家住宅。慶長13年の建築だそうだ。







栗山家住宅
05・02・25 F3

新町通にあって絵心をくすぐる餅屋。大正時代の創業だそうだ。







餅商一ツ橋
05・02・25 F3

五條D(五條市本町2丁目)02・05・25    F8
この町を還流する西川という小さな川は複雑に湾曲していて、この場所では川に落ち込みそうに家が建っている。この少し上流に京都・伏見にも決して引けを取らない酒蔵群がある。久しぶりにこの町を訪ねたら、ポイントの場所が空き地になっていた。町並みの大敵「歯抜け現象」だけは何とか避けてもらいたいが、これが一番難しい。

五條C(五條市本町2丁目)94・07・10     F8
鉄屋橋という橋を挟んで緩やかにカーブしている旧紀州街道はいかにも絵になる。最近、鉄屋橋が新しくなり、道もカラー舗装されて取り澄ました雰囲気になったのが残念だが、このころは生活感もあった。この町並みの特徴である黒漆喰壁の家を表現するため敢えてモノクロ仕上げにとどめたこの絵が気に入っている。

五條B(五條市五條1丁目)93・07・10      F8
国道168号のこの交差点から古い町並みが始まる。入り口にあるのが栗山家で、その向こうに大きな煙出しのある山本酒造の建物が見える。

五條A(五條市本町2丁目)91・11・10 F6
手前にあるのが鉄屋橋。道は和歌山方向へ続く。絵の左側にある「餅商一ツ橋」という看板が右書きのため、よく写真などで紹介されている。残念ながらまだこの店の餅を食べたことがない。

五條@(五條市本町2丁目)91・11・10 F6
旧紀州街道(新町通)の鉄屋橋を渡ったところから西の二見方向を眺めた。何の変哲もない町並みだが、いかにも旧街道らしい雰囲気が感じられる道が続く。

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