奈良県

御所(御所市)

御所(ごせ)市の名柄には以前から何回も通っているが、御所市の中心部はこれまで素通りだった。名柄に行った帰りに町を歩いてみると、古い町並みとしては第1級である。もともとは城下町(陣屋町)として発展したそうだが、今の町並みの基盤ができたのは江戸時代の商業だろう。碁盤の目の細い道筋に贅を凝らした商家が軒を連ねている。この町にはまってしまった。

神宮町のタバコ屋(御所市)  2012.08.08         F6
東西南北どちらを向いても絵になる碁盤の目状の古い町並みなら、暑い季節でも時刻に合わせて日影を選べば涼しくスケッチできるのではないかと、御所市へ出かけた。ここを訪問するのは05年以来だったが、1枚目に選んだ場所は7年前と同じ場所だった。ここは日影の具合から午前中しか描けないポイント。タバコ屋さんのショウウインドウは木の扉で閉じられている。以前、自販機がないタバコ屋は珍しいと思って描いたが、さすがにこれだけ禁煙が進むとタバコ屋という商売はやっていけないのだろう。

西町の元料理屋(奈良県御所市)  2012.08.08         F6 
西町へ行くと、閉鎖されたショッピングセンターらしいビルの北側に長い影ができている。そこへ入って、向かいに見える建物を描くことにした。昔は料理屋として繁盛していた建物だそうで、その前には高札場らしい施設が再現されている。すぐ近くに、7年前に来た時、描きたいと思いながらやり過ごした古い町屋があった。今回訪ねてみると、重機が入って盛んに取り壊し作業をしている。やがて昼になり、私が陣取っている大きな日影は解体業者の人にとっても涼しい昼食場所になっているようで、皆さんが弁当を持ってやってきた。私も用意していたおにぎりを一緒に食べながら、「実は取り壊しているあの建物を描きたかったのですよ」と話しかけると、「200年は経っていたそうだが、2週間遅かったね」ということだった。

中本町の造り酒屋あたり(御所市)  2012.08.08         36×51p
東西の通りには南側に一日中日影ができている。中本町に油長酒造という造り酒屋があって、その周辺の家並みが面白いので、体を少しだけ軒下へ入れさせてもらってスケッチした。古い町屋が並ぶ中に、お酒を入れるタンクがぬっと建っている。タンクの向かい側には鉄筋コンクリート造の酒屋の事務所があるが、それが目立たない場所を選んだ。この日は一日中涼しい風が吹き、日影だと快適なスケッチ環境だった。しかし、真夏の昼下がりには、通りを歩く人の姿はほとんど見られない。

西久保本町の民家(御所市)  2012.08.08         F6
午後になると西側の影が次第に長くなるので、再び南北の道へ。造り酒屋の裏手あたりだが、町名は西久保本町に変わる。酒蔵に並んで由緒ありそうな民家があったので、日影を選んでスケッチした。この家のご主人が出てこられ、「わが家はこのあたりで一番古く、当時、周辺にはほとんど家がなかったと聞いている」と解説してくれた。続いて奥さんもよく冷えた缶ジュースを手に出てこられた。ありがたく頂戴した。

神宮町の路地(御所市)  2012.08.08         F6
もう引き揚げようと市役所の駐車場へ戻る途中、ふと神宮町のこの路地風景が気になった。豪勢な民家ではないが、伝統的な建物であることには違いなく、しかもなんとなく生活感が漂う。小さなお寺の塀際に椅子を置いたが、すでに道全体が日影になっている。左手前が空き地になっており、「生活小物」がよく見える。楽しく描いていたが、ちょっと他人様の生活を覗き見しているような気分になり、早々にスケッチを終了した。

御所6・神宮町(御所市)05.10.06 36×51cm
最初に御所に行った時、まず目に止まったのがこの場所、神宮町の南北の通りだった。しかし日陰がない。少し涼しくなったので、改めてこの場所でスケッチすることにした。手前のお宅は土蔵を含め何と丁寧な造りであることか。家の一部分を活用したタバコ店も十分に時代色が出ている。今ごろ、自販機を置いていないだけでも珍しい。そんな雰囲気を生かすため少し色彩を抑えた仕上げにしてみた。

上の絵と同じ場所だが、影がなく暑そうなのでとりあえず写真を撮った。雨の日の楽しみに、写真から描いた。






御所4・神宮町(御所市)05.09.01
F8

御所5・本町(御所市)05.10.06 36×51cm
秋の長雨の区切りといった爽やかな晴天に誘われ、再び御所へ。御所の中心部の道路は碁盤の目状になっている。下の御所3の絵と同じ通りに、見事な大和棟造のお宅があったので、これをスケッチした。

 《 御所スケッチマップ 》 






 05年にスケッチした1〜6の場所が番号で表示してあります。

御所3・西久保本町(奈良県御所市)05.09.01 36×51cm
西久保本町の東西の通りには立派な構えの造り酒屋があって、その向かいにこの酒屋さんの巨大なタンクがぬっと建っている。古い町並みという観点で見ればずいぶんじゃまな存在だが、町が生きている証拠ともいえる。

御所2・神宮町(御所市)05.09.01 36×51cm
重要文化財に指定されたような有名な建物はないものの、現役で働く伝統的な商家の建物が数え切れないほど残っていて、角を曲がるたびにスケッチしたくなる町並みが広がる。1日おいてまた御所に出かけ、日陰を選んで神宮町の東西に延びる通りで描いた。正面にそびえるのが葛城山(959.7m)。その向こうが大阪府である。

御所3・西町(御所市)05.08.30 36×51cm
町を歩いていると、街灯の広告に「岸本」の文字がある場所に行き当たり、迷わずここを描くことにした。JR御所駅に近い西町のこの場所は道路がかぎ型に曲がっており、昔、城下町への入り口であったことをうかがわせる。地元ではこの道筋を、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が葛城山や金剛山に通った道ということで「行者街道」と名づけ、真新しい道標まで建てられていた。

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