奈良県

栢森(明日香村)

観光客が絶えない石舞台古墳の横を抜けて、芋ケ峠へ向かう県道(桜井明日香吉野線)を走ると阪田、稲渕、栢森(かやのもり)など棚田に囲まれた品格のある集落が次々に姿を見せる。のんびりとスケッチか楽しめるポイントである。しかし、一番奥の栢森は”過疎”のにおいも。

   
  栢森に春の気配@(明日香村)2019.03.14   F6  
  栢森の郷土料理店「さらら」が、最近、料理の予約客以外に喫茶だけでも受け入れることにしたとのことなので、表敬訪問して一息入れた。その後、栢森の入り口で1枚。「さらら」を営む坂本博子さんも最近、先生についてスケッチの練習を始めたとのことで、私が描いている所まで絵を覗きに来られた。店へ帰る後ろ姿を点景に。実はこの絵、空のスペースが大きくなったので、空に少し変化を付けたが、コピーしたら全部飛んでしまった。  
 
 
   
  栢森に春の気配A(明日香村)2019.03.14   F6  
  栢森の入り口でスケッチしていたら、自宅から電話があり、嬉しい知らせを伝えてきた。というわけで(あまり理由にはなならないが)、もう1枚描くことにした。ほんの少しだけ奥へ移動して、集落の家並みを俯瞰できるポイントに座った。風景全体に春の気配を感じるものの、1年で一番色のない季節である。  
 
 
   
  栢森の棚田@明日香村)2018.09.19   F6   
  明日香村の黄金色の棚田を描くシリーズの最後に栢森に入った。途中の稻淵は彼岸花を撮るカメラマンで大賑わい。しかしその奥にある栢森では、スケッチしていても物音ひとつしない。栢森の田んぼは、この日最初に描いた阪田あたりに比べるとずいぶん色づいている。明日香では川の上流から順番に田植えをすると聞いたことがある。それが事実なら、飛鳥川の最上流にある栢森は明日香でも一番田植えが早く、稲刈りも早いことになる。  
 
 
   
  栢森の棚田A(明日香村)2018.09.19   23×41p   
  栢森の同じ場所で棚田の2枚目を描いた。何回も描いたことのある家並みだが、手前の田んぼが黄色の時は初めて。ただ、背景の表現が少し雑になった。  
 
 
   
  栢森の棚田B(明日香村)2018.09.19   23×41p  
  栢森の棚田を同じ場所からもう1枚。フェイスブック友達の坂本博子さんが経営する「さらら」の建物が見える。この日は定休日で門扉が閉まっていたが、せっかくだからその建物も描き込んでおいた。  
 
 
   
   栢森の秋16−1(明日香村)16.11.17     36×51p  
  奈良県での私のスケッチとまったく同じアングルで写真を撮り、1年間、365枚をフェイスブックに掲載された奇特な方がおられる。奈良県在住の下西康夫さんという方だが、奥明日香・栢森での1枚(下の栢森A)がどうしても同画角の写真が撮れないと言われる。どうやら私のスケッチが間違っているらしい。天気も良し、紅葉の具合も良いころなので、改めて写真と同じ角度の絵を描きに行った。ただ現場へ行ってみると、以前描いた場所より道の反対側に座った方が感じが良い。また、氏の写真とは違う角度になってしまった。  
 
 
   
   栢森の秋16−2(明日香村)16.11.17     F6  
  下西康夫さんの昔の同級生が栢森で郷土料理の店「さらら」を営む傍ら地域興しの活動もされているとのこと。その坂本博子さんにお目にかかるのも、この日栢森へ行ったもう一つの動機で、「さらら」へ立ち寄る途中でもう1枚描いた。以前にもスケッチしているこの家には、陶芸家一家が移住されているという。  
 
 
   
  栢森の秋16−3(明日香村)16.11.17     F6   
  上の絵はアングルが平凡で、この構図で描きたかった。ところが、他人様の家へ入る橋の上に座る必要があり、あきらめた。帰宅後、下西さんのFBをみると、このアングルの写真が掲載されている。「1枚ぐらいは逆のケースがあっても良かろう」と、氏の写真を参考に描かせてもらった。  
 
 
   
  栢森の秋16−4(明日香村)16.11.17     F6  
  郷土料理の店「さらら」にお邪魔し、一息入れた後、栢森の集落を振り返ってもう1枚描いた。栢森は両側から山が迫っており、午後2時過ぎなのにもう夕方の気配が漂っている。ただ紅葉した山にちょうど西日が当たっており、いかにも綺麗だった。左手前の土手は、初秋なら彼岸花が群れ咲く場所である。正面に「さらら」の駐車場の看板が見える。  
 
 
入谷と栢森・2014年夏(明日香村)2014.08.06     36×51p
阪田から栢森へ移動した。栢森の共同墓地は午後には完全に日陰になる。その墓地からは、山の上に入谷の集落が見え、栢森の家並みが俯瞰できる。盆が近いので墓地全体がきれいに掃除されており、申し訳ないような気分で日陰になった参道に椅子を置いた。スケッチしていると、若いころに村を離れたというご夫婦が墓参に来られた。明日香村の中でも入谷や栢森は不便な場所にあるため過疎化が深刻である。つい話題はそんな問題になった。

栢森の昼下がり(明日香村)2014.08.06     F6
集落の一番奥まったところに「加夜奈留美命神社」があり、その前に巨大な三角形の赤い屋根がそびえていて、いかにも存在感があるので、もう1枚描くことにした。構図は気に入ったが、スケッチしている間、周辺でまったく人の気配がしない。栢森へは比較的頻繁に足を運んでいるが、そのたびに空き家が増えているような気がする。留守と空き家の違いはすぐに分かる。家の前に車が止めてあったり、洗濯物が風にはためいていたりするとホッとする。

栢森の春(明日香村)2013.05.05        F6
この日は栢森から山の上に見える入谷へ行ったが、山を下ってきて、ようやく里へ戻ったよう気がしてほっとした。集落のあちらこちらに鯉のぼりが揚がっている。子供の日にはいかにもぴったりの風景と思い、”おまけスケッチ”をした。田んぼの間の細道を登っていくと、イノシシ除けのため、トタン板の柵が張り巡らされている。入谷でもイノシシやアライグマなどに農作物が荒らされて困るとの話を聞いたが、獣害は今、過疎集落共通の悩みである。シカやサルが出る場所ではもっと背の高い柵が必要で、もっと大変だという。

季節外れの「鯉のぼり」(明日香村栢森)2013.01.20     36×51cm
「大寒」だが、奈良県の最高気温が10度というので、明日香にでも行くかと家を出た。どこで描くか迷いながら、稲淵を経て栢森まで行くと、稲淵では単に冬枯れの景色だったのに、栢森では何とそこここに雪が残っているではないか。さすがに”奥明日香”と呼ばれる集落である。冬の天候を甘く見たと大いに反省、日当たりがよさそうなことを確かめて、家並みを見下ろす田んぼへ登ってみた。目の前で「鯉のぼり」が泳いでいる。5月なら「のどかでいいなあ」と思うのだろうが、寒風に泳ぐさまはいかにも不釣り合い。寒さが倍加した。

栢森の冬13−1(明日香村)2013.01.20     F6 
上の絵を描いた後、集落を貫く道路沿いでスケッチポイントを探した。ほんの少し歩くと典型的な大和棟造りのお宅があったので、これを描くことにした。小さな橋の上に座る必要があり、寒そうだったが、アングルを優先。ここだと時々通る車の邪魔にもならない。失礼ながら、ちょっと痛んだ白壁に「過疎」を感じた

栢森の冬13−2(明日香村)2013.01.20     F6
集落を貫く道筋で2枚目を描いた。道端に座っていたが、「加夜奈留美命神社はこの先ですか」と聞いてきた中高年夫婦以外は、村の人も観光客もだれも通らない。この日、栢森で半日近くを過ごして、言葉を交わしたのはこの夫婦との2,3言だけ。道端や屋根の上の雪は消えることなく残り、日差しもなくなったので、いかにも寒い。まだ時間は早かったが、この日はこれで打ち止めにした。

栢森の秋10−1(明日香村)10.11.18      F6
もう少し待てば紅葉がさらに進むが、半面で急に寒くなる。紅葉と寒さのバランスが取れるころだと判断して、明日香村の栢森へ行った。このポイントは飛鳥川の細流に面した民家群。寒い冬に備え薪をたくさん蓄えている。農作業は終わったので、集落の入り口で道路工事をしている人以外には、集落内にも周辺の田んぼにも人影はほとんど見当たらない。

栢森の秋10−2(明日香村)10.11.18       F6
この季節は日向・日影を気にせずに描けるので、新しいポイントを探すため集落内を少し歩き回った。栢森集会所という建物の裏手で、屋根の並びが面白いアングルを見つけた。紅葉した山も見えるし、ちょうど背中から陽も当たり気持ちが良かった。この絵が気に入り、2013年8月に開催した第8回個展の案内状に使った。

栢森の秋10−3(明日香村)10.11.18     36×51cm
この日の天気予報は「晴れ」だったのに、昼過ぎから急に雨が降り出した。せっかく遠くまで来たので、そのまま引き揚げる気にもならず、車の中で雨の止むのを待った。この絵は降ったり止んだりする空模様を眺めながら、雨の止み間を縫って描いた。以前から一度描いてみたいと思っていたアングル。

栢森の秋10−4(明日香村)10.11.18     36×51cm
栢森集落の奥まったところに神社があり、その石段の上から見る家並みが面白いと思った。中央にある元茅葺き屋根の民家がいかにも存在感がある。実は石段の下に電柱があり、画面を二分することになるので、私にしては珍しく、電柱を取り去って描いた。午後遅くなると雨は止んだので、もう1枚と欲張ったが、急に気温が下がり、体がすっかり冷えた。

栢森F(明日香村)09.10.01  36×51cm
10月に入ったので、稲刈り前の田んぼを描こうと明日香・栢森へ行った。高台にある墓地へ上がると、涼しい影が得られ、見晴らしも良い。石舞台古墳あたりは観光客であふれていたが、栢森までやってくる人はいない。村は静かに実りの秋を迎えていた。

栢森G(明日香村)09.10.01   F6
上の絵を描いていて気になった赤い屋根の家の近くに行ってみると、内部はがらんどうで取り壊し作業が進んでいるようである。今度来た時にはなくなっているかもしれないと思い、スケッチにとどめることにした。(工事はリフォームだったようで、後日行ってみると、綺麗な建物に生まれ変わっていた。失礼しました)

栢森E(明日香村)07.11.04 36×51cm
紅葉を期待しながら栢森へ入ったが、まだだった。この集落も過疎化が進んでいる。もう使われなくなったバス停の建物に、琺瑯看板が所狭しと張ってある。琺瑯看板というものも郷愁を誘う。ただ「民営化してもここは忘れていませんよ」とばかり、郵便ポストには新しい「日本郵便」のステッカーが張ってあり、年賀状の売り出しを知らせる旗も立てられていた。

栢森と入谷(明日香村)07.07.24 36×51cm
また栢森へ行って、ちょっと違った角度から描けないかと周囲を見渡すと高いところに集落の墓地が見える。お盆が近いため、お墓への道もきれいに草が刈り取られている。そこからは栢森の家並みが俯瞰できた。おまけに山の上にある入谷(にゅうだに)という集落もよく見える。入谷は戸数10軒余りの集落だそうで、栢森へ行った時はいつも気になっているが、まだ登ったことがない。

栢森D(明日香村)07.07.05 31×41cm
明日香に出かけたらたまたまひまつぶしさんにばったり出会った。せっかくなので彼のお気に入りの栢森に行き、これまたお気に入りのポイントで描いた。


現地で描いたのはこの絵。気に入らないので描き直したのが上の絵。

栢森C(明日香村)07.06.05 31×41cm
栢森にはとても重厚で風格のある民家がたくさんある。ただ、交通が不便なためか過疎化が進み、人が住んでいる気配がしないお宅も何軒かある。日陰を選んでスケッチしていると、せせらぎの音以外には何も聞こえない。ツタがからんだ建物を描いているうちに、なぜかふと、ふるさとの村を思い出し、ちょっとしんみりしてしまった。

栢森B(明日香村)06.12.11 36×51cm
最後の紅葉を求めて栢森へ。日当たりもよくとても気分よくスケッチした。「明日香でもここは不便なので、若い人はみな村を出てしまい、年寄りばっかりです」と通りがかったご婦人が嘆いていた。谷が深いため、午後2時にはスケッチしている場所が日陰になった。どこかでもう1枚描きたかったが、諦めた。

栢森A(明日香村)03・09・27         F8
稲穂が色づいてきた。彼岸花も盛り。しかもこの上はないという晴天に誘われて、また栢森へでかけた。集落には風格のある家々が多い。下の絵は集落の入り口だが、今度は一番奥まった場所で描いた。絵を描いていると近所の奥さんがカメラを持って出てこられた。「ウン10年もここに住んでいるが、ここが絵になるとは知らなかった」と盛んにシャッターを切った。

栢森@(明日香村)03・06・29       36×51cm
初めて訪問した一番奥の栢森は、せせらぎの音がさわやかな集落だった。通りがかりの人が「昨日の夜はホタルがたくさん舞っていましたよ」と話しかけていった。

明日香村稲渕へ
「近畿の旅3」(奈良、滋賀)の目次へ