長野県

奈良井(楢川村=現塩尻市)

旧中山道の木曾11宿のうち奈良井が一番往時の姿をとどめている。町並みに一歩足を踏み入れると元は石置き屋根だった軒の深い家々の連なりに思わずぞくっとする。妻籠より2年遅れの78年(昭和53年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定されたが、保存状態という点ではすっかり観光地化している妻籠を上回っている。この町で04年5月29日、町並み探索グループ・いらかぐみのオフ会が開かれ、江戸時代の姿のまま「旅籠」を営んでいる「伊勢屋」に泊った。

奈良井・下町(楢川村)04・05・29 アルシュ36×51cm
いらかぐみメンバーとは夕方、JR奈良井駅前集合ということになっていたが、私は前泊した木曽福島から朝一番でこの町に入った。奈良井の宿場町は約1キロメートルにわたって長々と続いているが、北側の奈良井駅に近い下町でまず1枚目を描いた。このあたりが一番道幅が狭く、両側の屋根が重なり合っているように見える。スケッチ後に蕎麦屋に入ったが、この店を一人で切り盛りしているおばあさんは「町では独居老人家庭が増え家屋の維持も大変」と嘆いていた。

奈良井・中町(楢川村)04・05・29 アルシュ36×51cm
2枚目は宿場の中心部・中町に移り、蕎麦屋でもらったホウバ餅をほおばりながら描いた。時々雨がぱらつくため、深い軒の下を選んだ。正面の看板のある建物が宿泊した「伊勢屋」、左側が「ゑちごや」。伊勢屋の庇には奈良井独特の「猿頭」と呼ばれる飾りが取り付けられている。 七ちょめさんの「伊勢屋」宿泊リポートがこちらに。

奈良井・上町(楢川村)04・05・30 キャンソンF8
いらかぐみメンバーは朝が早い。つられて私も朝飯前に一番南側の上町で3枚目に挑んだ。朝日に映えた山が美しかった。
椅子を置いた場所は「鍵の手」と呼ばれ、道が屈曲していて、町並みを正面から描ける。メンバーの七ちょめさんが、いつも私のページに載せているような後ろ姿写真を撮ってくれた。


木曽路をやってきた旅人が奈良井宿にたどり着くには「鳥居峠」という険しい峠を越える必要があった。当時の旅行者がようやく宿場に着いてほっと一息入れた風景は恐らくこれに近いはずである。左側の石置き屋根の小屋が「宮の沢」という水場。
(上町を探索するいらかぐみメンバー)

木曽路の宿場町には「水場」が整備されていることが多いが、奈良井には5、6カ所もあって、それぞれに意匠が違っていて楽しい。今回は全ての絵をこれらの水を使って描いた。多少はうまく描けたかな。

             (宿場の南側の入り口にある水場)

新潟県湯沢町・苗場スキー場へ
「東日本の旅」目次へ