京都府

裏寺通(京都市中京区)

裏寺通は、京都一の繁華街・河原町通と新京極通に挟まれた南北の短い通りである。その名前の通り、小さなお寺がひしめいているが、それらに混じって庶民的な飲食店もたくさんある。酒は好きだがお金はない学生時代を京都で過ごした私にとって、祇園だとか木屋町、先斗町などは無縁の存在で、裏寺はたまには繁華街近くで飲みたいというニーズを満たしてくれた。昭和30年代の終わりごろ、「5円寿司」という看板を揚げた店があったし、串かつ1本5円という店もあった。

     
   裏寺通蛸薬師下ルA(京都市中京区裏寺町)16.06.22      F6  
  三条河原町で開かれている展覧会を訪問後、近くでスケッチすることにした。目新しい場所も思い浮かばないので、ギャラリーから近い裏寺通へ行った。梅雨の最中とあって雨も心配なので、いざとなれば屋根の下に逃げ込めるお寺の門に座ったら、以前描いたのとまったく同じ構図になってしまった。  
 
 
     
   柳小路・静(京都市中京区)16.06.22      F3     
  この日の2枚目は裏寺通の四条近くにある「柳小路」の「静」という居酒屋を描いた。実は学生時代に「静」によく行っていた。この店は”落書き酒場”として有名だが、実はそのきっかけを作ったのがわれわれだった。属していたサークルでちょっと嬉しいことがあり、この店でお祝い会をした。ちょうど店内の壁を白漆喰に塗り替えたばかりだったが、大いに盛り上がった勢いで、(許しを得て?)入り口の横の壁にわれわれの名前を黒々と書いた。その後、大学紛争が激しくなるのに連れて落書きが増え、そのうちに壁、天井、トイレの中、テーブルの上と書けるところはすべて落書きで埋め尽くされ、現在に至っている。入り口横にはその直後に大型エアコンが据え置かれたため、われわれの記念のサインは上書きされず保存される結果となった。1964年のことで、半世紀以上が経過、もう時効だと思うので白状する。お世話になったマスターは先年亡くなられたと聞いたが、店は今も木〜日の週4日営業しておられる。  
 
「静」で写した写真があった。02年4月6日に京都・大覚寺周辺で悠彩会のスケッチ会があり、帰路に立ち寄ったときのものである。左側のお三方(左から柴崎さん、柳田さん、山田さん)はその後、鬼籍に入られた。(16.10.09掲載、カメラは浅野さん)






 
 
 
裏寺通蛸薬師下ル@(京都市中京区裏寺町)11.09.07     36×51cm
一度、この通りで描きたいと思い、たびたび足を踏み入れたことがあるが、なぜか気分が乗らなかった。ようやく念願がかなった。

京都市中京区・烏丸丸太町付近
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