京都府

上京・食の老舗(京都市上京区)

京都市の上京区は大雑把にいえば京都御所の西北に広がる。古くからの京都市街地の中心で、織物産地の「西陣」も同区に属す。千本通以外には、いわゆる繁華街はないが、各地にいかにも京都らしい老舗があり、その建物をスケッチした。

澤井醤油本店(京都市上京区)2012.03.29     F6
「上京・食の老舗」シリーズの1枚目は京都御所に近い中長者町通新町西入ルの「澤井醤油本店」を描いた。明治12年の創業だそうで、建物はもう少し古いとか。絵を描き始めた途端、横に車が止まり、にこやかに下りてきた人がいる。スキー仲間のHさんである。Hさんは京都在住とはいえ、やはり奇遇。しかし道端で病気談義とはお互い情けない。昼前になると小学校低学年の女の子がぞろぞろ下校してきた。「春休みなので昼まで」とか。そのうちの1人は「漫画家になるのが夢」だという。彼女らの要望に応え、遠くに見える「新町小学校」の建物を絵の右隅に無理やり描き込んだ。

山中油店(京都市上京区)2012.03.29     F6
「澤井醤油本店」を描いたあと、かなりの距離を西へ歩き、下立売通智恵光院西入ルの「山中油店」へ行った。食用油など油の専門店で、江戸時代後期・文政年間に創業、200年近い歴史がある。建物は幕末の安政2年(1855年)に建てられたという。スケッチしていて竹製の樋が気になった。同店のホームページによると、「質素倹約を旨とすべし」という初代からの教えにより、わざわざ竹製樋を使用し続けているとか。しかし昔ならいざ知らず、現在ではかえって贅沢とも思えるのだが…

佐々木酒造(京都市上京区)2012.03.29     F6 
3枚目は「山中油店」からほど近い椹木(さわらぎ)町通智恵光院東入ルで「佐々木酒造」の酒蔵を描いた。京都のお酒といえば伏見(京都市伏見区)の酒が有名だが、旧京都市内(洛中)には同社と左京区のもう1軒しか酒蔵が残っていない。佐々木酒造は明治26年(1893年)の創業だそうだが、そのころ洛中には130軒を超える酒蔵があり、だれが数えたのか知らないが、室町時代には350軒もの酒蔵があったという。ところで佐々木酒造の話をすると「それは俳優・佐々木蔵之介の実家ですね」という反応が返ってきた。実は恥ずかしながら佐々木蔵之介という俳優をよく知らなかったが、ネットで調べるとけっこう有名な俳優らしい。

萬亀楼あたり(京都市上京区)2012.03.29     F6
「上京・食の老舗」シリーズの締めくくりに猪熊通下長者町下ルの料亭「萬亀楼」を訪ねた。京料理の老舗は数多いが、萬亀楼は御所ゆかりの”有職料理”の伝統を継承している。享保7年(1722年)に造り酒屋として創業したといい、その後料理屋に転じ285年になるとか。店の前まで行ってみると残念ながら定休日のようで、暖簾が出ていない。仕方なくその南側に連なる町家も入れて「萬亀楼あたり」の絵とした。

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