兵庫県

田久日(豊岡市竹野町)

兵庫県北部の日本海沿いに、かつて但馬海岸有料道路と呼ばれた道路(県道11号線)がある。絶壁の高いところを縫って走る道路で、自衛隊によって造られたことで知られる。もともと観光道路として開発されたが、沿線にある小さな漁村にとってはかけがえのない生活道路でもある。村々はこの道ができるまでは文字通り陸の孤島であった。竹野と城崎マリンワールドとの間に宇日(うい)と田久日(たくい)という2つの集落があり、ともに平家の落人が住み着いたと伝えられている。

   
  田久日A(豊岡市竹野町)16.10.11     F6  
 
下の絵にあるように10年前、通りがかりにスケッチしたことがあるが、今回は城崎温泉でスケッチ後、かなり後戻りすることを覚悟でわざわざ「田久日」を訪問した。小さな湾に面して家々がひしめいており、まさに絵心がくすぐられる風景である。海に面した岩の窪みに小さな祠があり、鳥居の前に白い幟が立っていた(→の写真)が、絵では目立つように「赤」にしておいた。「平家の赤旗」と言われるが、神社の幟の色を勝手に変えるなと叱られそうである。









 
 
 
   
   田久日B(豊岡市竹野町)16.10.11     F6  
 
集落に下りていって描くことも考えたが、やはり高いところにある海岸道路からの眺めが魅力的である。少し場所を移してもう1枚描くことにした。海岸道路はけっこう車が通るので、身の安全を図るためガードレールを乗り越えて交通標識の土台の上に椅子を置いた。少し窮屈だが、見晴らしは抜群で、ここなら絶対に車はやって来ない。








 
 
 
   
   田久日C(豊岡市竹野町)16.10.11     36×51p  
  但馬海岸道路が開通したのは1965(昭和40)年7月のこと。それまで田久日へは船に乗るか山越えの狭い道を徒歩で行くしか方法がなかった。悠彩会展の会場に最近描いた絵のコピーファイルを置いていたが、そのファイルの中にこの絵を見付けたご婦人が「若いころ山越えで田久日へ行ったことがある」と言われる。聞けばその方は豊岡市の出身で、ある悠彩会員と故郷の中学で同級だったという。思いがけない体験談に大いに盛り上がった。ところで、スケッチした当日はどんよりとした曇りで、スケッチには好都合だったが、海の色はもう一つ。同じような絵が3枚目なので、着色時に海をコバルトブルーにして、晴れの景色にしておいた。  
 
 
田久日(たくい)@(豊岡市竹野町)05.04.26 36×51cm
  竹野から城崎方面に向けて車を走らせていて、車窓に飛び込んできたこの集落の家並みに魅せられ、思わず車を止めた。  

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